研究課題/領域番号 |
24710061
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研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
逆井 良 金沢医科大学, 医学部, 助教 (10549950)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | DNA二本鎖切断 / 非相同末端連結 / 相同組換え |
研究実績の概要 |
放射線や抗がん剤によるDNA二本鎖切断(DSB)は、非相同末端連結(NHEJ)と相同組換え修復(HR)の2つの経路で修復されることが知られている。この2つの経路はDSBを修復し、細胞死を回避する上で重要であるが、DNA複製とカップルしたDSBでは状況が異なる。DNA複製によるDSBでは、HRが優位に働き、NHEJが関与することで染色体異常を引き起こし、細胞死を引き起こしうることが知られている。したがって、複製によるDSBに対し、修復経路の選択は、その後の細胞運命を決定づける重大なイベントとなる。本研究では、anti-HR因子である53BP1とNHEJ因子であるDNA-PKに注目し、修復経路選択と細胞死との関連を調べる。とくに、複製によるDSBは抗がん剤であるカンプトテシン(CPT)によって引き起こされるDNA損傷であり、CPTに対する細胞応答として解析を行う。 これまでに、RNAiライブラリーによるスクリーニングから、DNA-PKの活性化制御因子としてE2ユビキチン結合酵素であるUBE2D3を同定している。そこで、パートナーE3ユビキチンリガーゼを同定するため、UBE2D3と相互作用することが知られているE3に対し、二次siRNAスクリーニングを行った。同定されたE3リガーゼはCPTによるDNA-PK活性化には必要であるが、他の薬剤によるDSBに対する活性化には影響しない。また、HR反応のためDNA末端構造の変化にも影響を受けないことを明らかとした。さらに、NHEJを介した染色体異常を観察したところ、UBE2D3ノックダウン細胞では、DNA-PK阻害細胞と同様に染色体異常の発生が抑制された。現在は主に、E3リガーゼによるDNA-PK活性化制御機構の解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
DNA-PK活性化機構と、anti-HR因子53BP1の局在制御に焦点を当てて研究を進めているが、DNA-PK活性化の解析をおおむね順調に進んでいる一方、53BP1の局在による修復経路選択の解析はあまり進展していない。ヒストン脱メチル化酵素(KDM)に対する53BP1に注目した解析からPHF8が候補因子として上がっていたが、精査の結果、実際の関与は認められなかった。また、他のグループからの報告で、53BP1と相互作用する因子がHR系に対し抑制的に働くことが報告され、実験系を見直す必要が生じている。現在、53BP1と相互作用する因子に対する評価系の構築に時間を要しており、構築でき次第、ヒストン脱メチル化酵素(KDM)に対する解析に進める。
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今後の研究の推進方策 |
DNA-PK活性化に関わるE3リガーゼの染色体異常、および、CPT感受性への影響を解析する。また、細胞内局在についても、NHEJ因子との関連について調べる。KDMによる修復経路選択への影響については、53BP1との相互作用因子に注目して現在アッセイ系を構築中であり、構築でき次第、KDMに対するRNAiライブラリーを用いたスクリーニング、および、修復経路への影響を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は、抗がん剤であるCPTで生じるDNA鎖切断に対し、DNA鎖切断端のプロセシング機構に注目し、53BP1とヒストン 脱メチル化酵素の関係と、DNA-PKの関与する非相同末端連結経路の制御機構という大きな2つの柱で解析を進めている が、ヒストン脱メチル化酵素の解析が滞っており、他のグループからの報告と合わせ、研究計画を修正する必要があるため、未使用額が発生している。
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次年度使用額の使用計画 |
既に脱メチル化酵素のスクリーニングは行っているが、決定的な因子の同定には至っていない。DNA末端のプロセシン グ因子群が、修復経路の決定に関与する事は示せている。他のグループの研究から、53BP1の相互作用因子であるRIF1 が修復経路選択に影響する事が明らかとされた。そこで、未使用額を使い、ヒストン脱メチル化酵素の影響を53BP1に加えRIF1にまで対象を広げて解析し、修復経路と細胞死への関与を調べる。
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