研究課題
若手研究(B)
環境残留性や生物蓄積性が高い環境化学物質は,母体が影響を受けない低用量曝露でもしばしば次世代に顕われることが報告されてきた.難燃剤として幅広く用いられてきたパーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)やポリ臭素化ジフェニルエーテル(PBDE)も周産期曝露による発達神経毒性が危惧されている環境化学物質であるが,その毒性影響はまだ十分に分かっているとはいえない.本研究では,マウスを用いてPFOSやPBDEの周産期曝露による発達神経毒性を検証することを目的とする.本年度は,PFOSの周産期曝露による発達神経毒性を検証するため,妊娠期または授乳期の母獣にPFOSを経口投与し,これらの母獣に育てられた仔を用いて解析を行なった.その結果,以下のような知見が得られた.①母獣の体重にはPFOS曝露による影響はなかった.②両曝露群とも,離乳までの生存率や歩様,毛並みや開眼時期,握力といった指標にはPFOS曝露による毒性影響は観察されなかった.③胎仔期曝露群において正立反射が遅かった.④ホームケージでの活動性は,両曝露群とも対照群と比べ活動性が低かった.⑤オープンフィールドを用いた新奇環境場面での移動活動量は,両曝露群とも対照群と同程度であった.⑥ロータロッドを用いた運動協調機能試験では,両曝露群とも対照群と比べ成績が悪かった.⑦タッチパネル式オペラント装置を用いた視覚弁別学習では,新生仔期曝露群の学習が遅かった.
3: やや遅れている
PFOSの周産期曝露によって,仔の協調運動機能や学習機能が影響を受けるという新たな知見を見出したことは大きな成果といえる.一方で,上記の機能異常を裏付ける脳組織の解析が十分とは言えず,当初の計画と比べてやや遅れている.
PFOSの脳組織への発達神経毒性影響の解析は,本年度得られた協調運動機能と学習機能の異常に焦点を絞り,これらの機能に重要な役割を果たしていることが知られている小脳や海馬を中心に解析を進める.
該当なし
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