研究課題
本研究では,パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)などの難燃剤化学物質の周産期曝露による発達神経毒性を検証することを目的としている.本年度は,前年度の研究から得られた知見,つまりPFOSの周産期曝露による協調運動機能と学習機能の異常に焦点を絞り,これらの機能に重要な役割を果たしていることが知られている小脳や海馬を中心に解析を行なった.得られた成果は以下の通りである.(1)小脳初代培養系を用いて,PFOS曝露による小脳プルキンエ細胞への毒性影響を検討した.その結果,PFOS曝露によりプルキンエ細胞の伸展が抑制された.また脱ヨード酵素のmRNA発現が有意に抑制していることが明らかとなった.(2)PFOSの周産期曝露が仔の記憶機能に及ぼす影響について検討するため,自発的物体再認テストおよび物体位置再認テストを行なった.その結果,PFOS曝露群において新奇な物体や位置への探索時間が対照群と比べ有意に短かった.(3)PFOSの周産期曝露による海馬への影響を検討するため,in vivoマイクロダイアリシスにより,baseline時とグリア型グルタミン酸トランスポーター選択的阻害剤PMB-TBOA投与時の背側海馬内のアミノ酸量を測定した.その結果,baseline時のアミノ酸量には群間で有意な差はなかったが,PMB-TBOA投与時ではPFOS曝露群においてグルタミン酸量が有意に多かった.
2: おおむね順調に進展している
PFOSの神経毒性メカニズムの解析には更なる検討の余地があるが,PFOSの周産期曝露による毒性影響に関して,行動と脳の両面から一貫した知見を得られており,おおむね順調に進展していると考える.
PFOSの曝露時期を変えて,生後どのくらいの時期の曝露がより影響を及ぼすのかについて検討する.また,PBDEの周産期曝露の影響を検証し,PFOS曝露の結果と比較する予定である.
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件)
Journal of Neuroendocrinology
巻: 26 ページ: 164-175
10.1111/jne.12135