本研究では,パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)などの難燃剤化学物質の授乳期曝露による発達神経毒性を検証することを目的としている.昨年度までの研究から,PFOSを生後1-14日目まで曝露することで,学習・記憶機能や協調運動機能が対照群と比べ有意に低下することが明らかとなった.またPFOS曝露が小脳や海馬機能に影響を及ぼすことが示唆された.これらの結果を踏まえ本年度は,生後のどの時期のPFOS曝露が脳機能の発達により影響を及ぼすのかを明らかにすることを目的として,生後の異なる時期にPFOSを曝露し,毒性影響の違いについて検証した. PFOSを生後1-7日目または生後8-14日目に曝露した群および溶媒のみ投与した対照群の3群を設け,これらの動物が成熟後に学習・記憶,協調運動機能に関する行動試験を行なった.その結果,生後1-7日目PFOS曝露群では,生後1-14日PFOS曝露動物と同様に,いずれの行動試験においても対照群と比べて有意に成績が低下した.生後8-14日目PFOS曝露群は,協調運動機能試験において対照群と比べて成績が有意に低下した.これらの結果から,生後直後からのPFOS曝露の方がより毒性影響が強いことが示唆された. また,デカブロモジフェニルエーテル(DBDE)授乳期曝露による協調運動機能試験遂行への影響についても検証した.その結果,DBDE曝露群は対照群と同程度の成績であった.本研究における曝露時期や曝露用量では小脳機能への明確な毒性影響は観察されなかった.
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