研究課題/領域番号 |
24710072
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研究機関 | 有明工業高等専門学校 |
研究代表者 |
山口 明美 有明工業高等専門学校, その他部局等, その他 (90399262)
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キーワード | 初期発生影響評価 / ビスフェノールA / ビスフェノールS |
研究概要 |
幼若生物に対する影響が懸念されているビスフェノールA(BPA)と環境中から多く検出されるビスフェノールS(BPS)を高電界パルスを用いてメダカ受精卵に導入し,その影響を観察した.未処理コントロール群の生存率は100%で,形態異常発生率は8.3%であった.パルス印加群は未処理コントロール群と同様に成長し,生存率,形態異常発生率はコントロールとほぼ同等で,パルス印加による影響はほとんどないと考えられた.BPAまたはBPSにつけただけの群も未処理コントロール群と同様に成長し,生存率,形態異常発生率は未処理コントロールと同等で,BPAまたはBPSにつけただけではメダカ卵の成長に影響を与えなかった.一方,パルス印加によりBPAまたはBPSを導入した群は,1日目に胚体ができ体が形成されていくが,4日目以降心臓はできても,血球と血管がほとんどできないものが現われた.5, 50 nM BPA暴露群の生存率はそれぞれ91.7,90 %であったたが,21.8, 31.5%にこのような形態異常がみられ,暴露濃度依存的に形態異常発生率が上昇する傾向が見られた.BPAはメダカ初期胚に毒性をほとんど示さない濃度で形態異常を発生させたことから, BPAの初期発生期の生物に対する影響を詳細に調査する必要があることが示唆された.BPS暴露群は低濃度側では影響が見られなかったため,BPAより高い濃度で暴露を行った.50, 500 μM BPS暴露群の生存率は84.4,80.2%であったが,形態異常発生率は13.6,16.9%であった.BPSはメダカ初期胚に形態異常を引き起こすが,細胞毒性のほうをより強く示し,BPAとBPSのメダカ初期胚に対する毒性の表れ方の傾向が異なることが観察できた.また,BPA, BPS暴露したメダカ卵のマイクロアレイ解析を行い,各群で発現量が変動している遺伝子を検出できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,昨年度行ったBPAの初期発生影響評価に続き,環境中から広範囲に検出されるBPS,エストロゲン受容体ERαおよびERβへの作用が異なることが報告されているビスフェノールAF (BPAF),メダカ成魚への急性毒性が高いビスフェノールC (BPC)および女性ホルモンのエストラジオール17-β (E2)をメダカ初期胚に暴露し,経過観察を行うとともに,各暴露群のマイクロアレイ解析を行った.形態観察の結果,BPA暴露群は血管形成の遅延,心臓肥大が見られるものが現われ,BPA暴露濃度依存的にこのような形態異常発生率は上昇する傾向が見られた.また,この他のビスフェノール類およびE2暴露群の形態異常発生率,形態異常の種類についても確認した.さらに,E2と共通して発現量が変動している遺伝子群および各ビスフェノール類特異的に発現変動している遺伝子群を検出できたことから,ほぼ最終年度の計画を終えた状態である.そこで本年度は機器の故障が原因で順序を変更した初年度分の計画を進めることにしている.
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今後の研究の推進方策 |
マイクロアレイ解析により検出したBPA, BPS暴露群共通に発現量が変動していた遺伝子群は,ビスフェノール類の暴露で見られた形態異常などに関連している可能性が高いと考えられ,今後これらの遺伝子群の調査を進めることを計画している.また,ERαまたはERβ選択性リガンドをメダカ卵に導入し,これらのマイクロアレイ解析を行う.標的とする遺伝子を選別し,リアルタイムPCRによる確認および詳細な調査を行い,ビスフェノール類の暴露で得られた結果と比較,検討することで初期発生胚に対するエストロゲン受容体(ER)を介した化学物質の影響について調査する.
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は概ね計画通りに支出してきたが,次年度分と合わせて使用したほうがより効果的に使用できると判断したため. 次年度の計画を進めるために次年度分の研究費と合わせて使用する.
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