研究課題
外部刺激に対する防御機構が備わっていない初期発生期の生物は,化学物質等の暴露により成体より深刻な影響をうける可能性があることから,幼若生物を用いて詳細に初期発生影響を調査する必要がある.卵性生物のメダカは低コストで容易に飼育でき,母体外で受精,発生し卵膜が透明であるため観察が容易であることから初期発生影響評価のモデルとして有望であるが,卵膜が固く外部から物質を取り込ませることが難しい.研究者らは,ナノ秒という極短時間に数キロボルトの高電界パルスをメダカ卵に印加することでメダカ卵膜の物質透過性を一時的に高め,外部から容易に物質を導入する方法を新規に開発した.メダカ受精卵に女性ホルモンであるエストロゲン(E2)を導入し発生を観察したところ,E2濃度依存的に骨格や胚体の形成異常や心臓・血管の形成の遅れや異常が見られたほか,孵化後に遊泳異常が見られるものもあらわれた.E2様作用および初期発生期の暴露と行動異常との関連が懸念されているビスフェノールA(BPA)および環境中から多く検出される類縁化合物ビスフェノールS (BPS),を同様の方法でメダカ卵に暴露したところ,BPA暴露群でメダカ初期胚に急性毒性を示さない濃度で心臓,血球や血管の形態異常や遅延が見られた.BPS暴露群もBPAと同様の形態異常が見られたが,BPS暴露群はBPA暴露群より死亡率が高くBPSは細胞毒性をより強く示し,物質特異的な影響が観察できた.また,DNAマイクロアレイによりE2,BPA,BPS,成熟メダカに対する急性毒性が高いビスフェノールCやビスフェノールAF,震災の影響による海洋汚染が問題となっているベンゾピレンやフェナントレンを導入したメダカ卵の遺伝子発現解析を行ったところ,各物質特異的に発現変動しており,特異的な形態異常や細胞毒性に関連していると考えられる遺伝子群が検出でき,初期発生期の生物に対する化学物質の影響解明に貢献できる結果が得られた.
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Journal of Applied Toxicology
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10.1002/jat.3063