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2012 年度 実施状況報告書

門レベルで異なる3つの細菌系統群で機能する脱ハロゲン呼吸活性化機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 24710077
研究機関豊橋技術科学大学

研究代表者

吉田 奈央子  豊橋技術科学大学, エレクトロニクス先端融合研究所, テニュアトラック助教 (10432220)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2014-03-31
キーワード脱ハロゲン化呼吸細菌 / 還元的脱ハロゲン化 / バイオレメディエーション
研究概要

地下水や土壌の汚染物質である有機ハロゲンを呼吸の電子受容体として還元的に脱ハロゲン化する脱ハロゲン化呼吸細菌は、環境浄化の微生物触媒として重要である一方、培養が非常に困難であり、分離株自体が少ないことからも、たとえば、どの酵素がどのハロゲン化化合物の脱塩素化に関与するかといった基本的な情報が得られていない。このような中、本研究は、実施者自らが獲得したGeobacterおよびDehalobacter属細菌のドラフトゲノム解析を行い、その脱ハロゲン化酵素遺伝子構造を決定した。12DCA脱塩素化細菌であるGeobacter sp. AY株について、さらにゲノム解析データを補填した結果、脱ハロゲン化酵素遺伝子は1つで、且つ、デハロバクター属細菌からトランスポゾンにより水平伝播された末に獲得されたものであることが示された。さらに、多様な芳香族塩素化合物を脱塩素化するファーミキューテス門Dehalobacter sp. FTH1株について、ドラフトゲノム解析を行った結果、少なくとも34の脱ハロゲン化酵素遺伝子を検出した。このうち、1遺伝子がDehalobacter restrictusの塩素化エタン脱塩素化酵素遺伝子に最類縁で98%のアミノ酸配列相同性を示し、33遺伝子がDesulfitobacterium属細菌のクロロフェノール脱ハロゲン化酵素遺伝子等に最類縁で47-88%の相同性を示し、1つの系統クラスターを形成した。これまでファーミキューテス門細菌の脱ハロゲン化細菌では多くとも1ゲノムに8つまでしか検出されていなかったことからファーミキューテス門細菌の脱塩素化呼吸代謝は比較的最近になって獲得されたと考えられていたが、FTH1株の34という多数の脱塩素化酵素遺伝子数から、これまで考えられていたよりも古くに脱塩素化呼吸代謝を獲得し、且つ独自に進化を遂げた事が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初予定していたFTH1株のドラフトゲノム解析、およびAY株のドラフトゲノムの補填解析を達成しており、デハロコッコイデスのゲノム解析については実施できなかったものの、解析に必要なDNA量を確保しつつある。

今後の研究の推進方策

①ジオバクターAY株由来1,2ジクロロエタン脱ハロゲン化酵素を用いた脱ハロゲン化酵素の特性評価および細胞膜画分における電子伝達系の構築 ジオバクターAY株を用い、脱ハロゲン化酵素タンパクを抽出するとともに、胞膜画分における電子伝達系を構築する。窒素ガス雰囲気で菌体を超音波破砕し、得られた粗酵素液をカラムクロマトグラフィーによる分取・精製する。脱ハロゲン化酵素の電子供与体として膜不透過性の電子キャリアーである還元型メチルビオロゲン(MVH))、有機ハロゲンを投入した脱ハロゲン化反応溶液をグローブボックス内で調製する。ここへ、分取した酵素溶液を添加し、酸化型メチルビオロゲン量を分光光度計によって測定すると共に、脱ハロゲン化産物の産生をGC-MS分析により確認する。さらに、密度勾配遠心法によりAY株の細胞膜画分を分取する。細胞懸濁液、細胞膜画分、および細胞内容物画分について、水素デヒドロゲナーゼおよびPCB脱塩素化活性を比較し、各酵素の所在および方位(ペリプラズム側もしくはサイトプラズム側)を調べる。水素デヒドロゲナーゼの酸化還元活性はベンジルビオロゲン(BV)を用いた比色定量により測定する。この他、キノンおよびシトクロムを含めて、各電子キャリアーの酸化還元の阻害剤を用い、電子伝達構成成分間の電子伝達を明らかにする。
②デハロコッコイデスおよびデハロバクター由来脱ハロゲン化酵素のin vitro合成および脱ハロゲンに供する電子キャリアーの特定 脱ハロゲン化酵素をコード遺伝子配列からin vitro合成し、そこへ還元型メチルビオロゲンおよび有機ハロゲンを加えることで脱ハロゲン化を観察する方法を用いて、各遺伝子がコードする脱ハロゲン化酵素の基質を特定する。

次年度の研究費の使用計画

脱ハロゲン呼吸細菌の嫌気微生物培養に関連した試薬および備品一式、分析用ガス、有機ハロゲンの化学分析に要する試薬類、嫌気微生物の遺伝子解析に要する試薬類およびプラスチック製品などの消耗品類を支出する。さらに本研究を遂行するための培養・化学分析・分子生物学実験の実験補助員1名の雇用する人件費、研究成果を発表するための論文投稿費および、国際論文投稿時に要する英文校閲費および国内外の学会出張費を支出する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2012 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Evaluation of biodegradable plastics as solid hydrogen donors for the reductive dechlorination of fthalide by Dehalobacter species2012

    • 著者名/発表者名
      N Yoshida, L Ye, F Liu, L Zhiling, A Katayama
    • 雑誌名

      Bioresource Technology

      巻: 130 ページ: 478-485

  • [雑誌論文] Simulation of the reductive dechlorination processes in a lab-scale anaerobic biobarrier with the enriched TCP dechlorination consortium2012

    • 著者名/発表者名
      Z Li, Y Inoue, T Mizoguchi, Y Simizu, N Yoshida, and A Katayama*
    • 雑誌名

      Journal of transactions of Tianjin University

      巻: 18 ページ: 441-449.

    • DOI

      DOI: 10.1007/s12209-012-1768-8

    • 査読あり
  • [学会発表] 多様な芳香族塩素化合物を脱塩素化するDehalobacter sp. FTH1株の ドラフトゲノム解析に基づく脱ハロゲン化酵素遺伝子解析

    • 著者名/発表者名
      吉田奈央子、Hauke Smidt、片山新太
    • 学会等名
      環境バイオテクノロジー学会 2013年度大会
    • 発表場所
      京都大学 おうばくプラザ
  • [学会発表] Enrichment of new candidate PCB dechlorinator, Dehalobacter sp. FTH1 and the physiological and genomic characterization.

    • 著者名/発表者名
      Naoko Yoshida
    • 学会等名
      Jade Mountain Forum on Sustainable Environment
    • 発表場所
      National Cheng Kung University , Taiwan
    • 招待講演
  • [学会発表] 細菌によるハロゲン化メチルの代謝

    • 著者名/発表者名
      吉田 奈央子, 井町 寛之, 片山 新太, 由里本 博也, 阪井 康能
    • 学会等名
      第216回 生存圏シンポジウム 植物と微生物 大気中のC1化合物を介した気候変
    • 発表場所
      京都大学生存圏研究所
    • 招待講演

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公開日: 2014-07-24  

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