研究概要 |
本年度は、3門の脱塩素化細菌のうち、Dehalobacter由来の脱塩素化酵素遺伝子を水平伝搬により獲得した可能性が示唆されたGeobacter sp. AY株について、将来的に特に脱ハロゲン化酵素遺伝子の異種発現宿主としての期待が持てることから研究を進めた。 前年度ドラフトゲノム解析を行ったAY株について、5kb程度の1gapを残したほぼ全長を決定し、3.9Mbpの染色体DNA配列および24kbpのプラスミド配列を得た。1,2-ジクロロエタン(12DCA)脱塩素化酵素遺伝子は、このプラスミドに存在していた。これまで、AY株の脱塩素化活性が非常に安定であること、付近にトランスポゾン遺伝子が存在していたこと、また最類縁のGeobacter sp. SZ株のPCE脱塩素化酵素遺伝子がゲノム上に存在していたことから、トランスポゾンを介してゲノム上に組み込まれたと考えてきた予想に反する結果であった。 これより、改めてAY株による12DCA脱塩素化活性を調べた結果、既知の12DCA脱塩素化細菌について報告された10倍の1,000ppm以上の12DCAを、酢酸を唯一の電子供与体且つ炭素源として培養することで、7-10日でエチレンまで脱塩素化することが示された。さらに、酢酸およびフマル酸を用いた非脱塩素化呼吸条件で前培養した細胞に12DCAを添加しても、およそ3日で1,000ppmの12DCAをすべてエチレンに脱塩素化した。このことは、本プラスミドが12DCA非存在下でもAY株中に非常に安定的に存在し、且つプラスミド中に存在する12DCA脱塩素化酵素も発現していることを示している。これより、本プラスミドおよびAY株を宿主として用いることにより、純粋培養が極めて難しく生育・分解速度が遅いDehalobacterおよびDehalococcoidesの脱塩素化酵素遺伝子を異種発現できる可能性が示唆された。
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