前年度においては、紫外線、クエン酸、鉄粉を単独あるいは組み合わせて使用した際の大腸菌・大腸菌群の処理効率をバッチ実験で検討し、さらに晴れた日と曇った日の二回、ペットボトルにレモン汁と微量の鉄粉を添加することで実証実験を行った。今年度は、前年度に得たこれらの研究成果ならびにその結果から推測された殺菌・不活化メカニズムに基づき、下記の項目に焦点を絞って研究を行った。 ・従来のコロニーカウント法に加えてフローサイトメーターを用いて生死細胞数を計測することで、本手法の細菌の殺菌・不活化のメカニズムの詳細を明らかにすること 具体的には、フローサイトメーターでサンプルを測定する前の前処理の際に、大腸菌の染色に用いる色素の種類を変えることで生大腸菌(DNAにダメージを受けた不活化された大腸菌を含む)と死大腸菌をそれぞれ選択的に定量できる原理を用いて、殺菌された大腸菌、不活化された(生存はしているもののDNAにダメージを受け増殖できない)大腸菌、そして物理的に除去された大腸菌のそれぞれの定量を試みる。 これらを目標として行った実験を行った結果、確信を持って結論づけるためには更なる検討が必要と考えられるものの、本技術における一般細菌の処理メカニズムは粒子状物質への吸着による物理的除去ではなく、紫外線による不活化でもなく、殺菌であることが示唆された。処理メカニズムに関する知見は本技術の信頼性を高めるためにも重要な知見であるため、今後も実験・解析手法の再検討を含めた研究を継続して行っていく予定である。
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