研究課題/領域番号 |
24710080
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 石巻専修大学 |
研究代表者 |
玉置 仁 石巻専修大学, 理工学部, 准教授 (30364417)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 東日本大震災 / 藻場 / 干潟 / 津波堆積物 |
研究概要 |
藻場・干潟生態系が東日本大震災により受けたダメージとその初期回復過程,および後背地に集積した津波堆積物の性状の理解を目的として,研究を行った。調査対象として,地震・津波の来襲を受けた石巻沿岸のアマモ類藻場(鮫浦湾),干潟(波津々浦湾)とその後背地,ならびに東松島市矢本地区を選定した。 1. 藻場・干潟が震災により受けたダメージとその初期回復過程 アマモ類藻場:湾西側に位置する当該ラインでは,震災に伴う地盤沈下については比較的軽微であると考えられたが,底質中のシルト分の大幅な流出を確認しており,津波による物理的撹乱の影響は甚大であったと推察された。またアマモ類に関しては,震災前に比べて著しく減少しており,津波による草体流出が示唆された。2013年冬には残存したアマモ類藻場の沖側において,若干の群落の広がりも認められ,回復の兆しが期待された。 干潟:震災により,最大で0.8mの地盤低下が認められた。これら地盤高の低下した場所では,底質の泥化と汚濁化が観察された。一因として,地盤高低下により,流動が静穏化した結果,堆積物が集積しやすくなっていることが推察された。また震災直後のこれらの場所では,生物相が著しく減少していた。2012年に関しては,現在解析中となるため定性評価とはなるが,生物相の回復が観察されている。 2. 津波堆積物の特性評価 鮫浦湾後背地に比べて,矢本地区では多量の津波堆積物が集積していた。また矢本地区の幾つかの場所の津波堆積物は,鮫浦湾後背地に比べて,多くのシルト分と有機物を含み,ヘドロ状を呈していた。後背地が漁農村となる鮫浦湾に比べて,市街地を擁する矢本地区では,震災以前には海域への多量の有機物負荷があったと推察され,このことが津波堆積物の性状の差に反映したものと考えられた。矢本地区の津波堆積物に関しては,震災から10ヶ月程度経過しているにもかかわらず塩害が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
藻場・干潟生態系が東日本大震災により受けたダメージの程度とその初期回復過程,および後背地に集積した津波堆積物の基礎的な性状を理解することを平成24年度の本研究の到達目標とした。 震災前後の藻場・干潟生態系の状態を比較することにより,これらの生態系の東日本大震災により受けたダメージの程度を把握した。また震災からの初期回復過程に関しては,藻場については現場での回復が未だあまり見られない,干潟に関しては2012年分の一部データが解析途中となり不明瞭な点も残るが,これらに関しては2013年度も継続調査を行うことにより,明らかにしていきたいと考えている。 後背地に集積した津波堆積物の性状理解に関しては,調査対象となる場所での津波堆積物量の推定,ならびにその物理化学的な特性(粒度組成,強熱減量,含水比,電気伝導度等)を明らかにした。 以上の理由から,本研究の進行状況を概ね順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
藻場や干潟が震災により受けたダメージからどのように回復するか,その初~中期的な回復過程を明らかにする。またこれらの生態系の後背地に集積した津波堆積物の化学分析を行い,その汚染状況を評価する。平成24年度と同じ藻場・干潟とその後背地を対象として,継続的な調査を行う。 1. ダメージからの回復過程:震災によるダメージからの初~中期的な回復過程を明らかにするため,藻場・干潟生態系の変化を追跡する。 2. 後背地に集積した津波堆積物の化学的特性の評価:平成24年時に採取された津波堆積物試料を深さ毎に区分し,重金属類等の分析を行い,津波堆積物の汚染状況を評価する。上記のデータ,ならびに平成24年の調査結果から,津波の来襲により陸域に集積した堆積物量を把握し,その量や性状が後背地の産業形態(市街地,農漁村)や地形(内湾・開放的水域等)によってどの程度異なるのかを明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の研究費(平成24年の繰越分を含め,計801,057円)の使用計画としては,現地踏査,ならびに津波堆積物の化学分析にかかわる物品費に41万円程度を計上している。なお津波堆積物の分析にあたっては,新潟薬科大学の小瀬知洋助教(研究協力者)の協力が必要となることから,その打合せのための交通費等にかかる費用として,10万円程度の謝金を予定している。なお藻場調査に関しては,潜水士の雇用が不可欠となり,2回分の調査費用として,20万円程度を計画している。また本研究成果発表のための旅費として9万円程度を計上している。
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