研究課題/領域番号 |
24710084
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
ウー ラダー 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (90544560)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 元素戦略 / 第一分子動力学法 / 遮熱コーティング / 国際情報交換 イギリス |
研究実績の概要 |
航空機エンジンの熱効率向上に最も期待される次世代の遮熱コーティング材に白金族希少元素を添加するによりエンジンの耐熱能力を著しく向上させることは近年の傾向である。しかし、特定の地層にppmオーダーしか含まれない白金資源の採掘には、大きな環境破壊が伴い、自給率が乏しい日本にとって、基幹産業を支える高付加価値な部材の原料供給リスクという問題がある。
本研究では、可能な限り現実に近い高温酸化界面(Ni,Pt)3Al/Al2O3のモデルを構築し、第一原理分子動力学法に基づく白金族元素添加の効果を解析すると共に、実験を行い酸化界面において白金族元素と同様な誘起反応が再現できる代替元素の探索を行う。この新たな計算科学的手法を用いて、対象とする代替元素の組成を検証し、有効と判断された代替材料について更に実証試験を行う。これによって白金族希少元素を含有しないコーティング材を開発し、資源、環境問題の解決に寄与することを目指す。
従来、他の材料分野に比べ、巨視的な視点で研究されている材料の高温特性を決める白金族希少元素の役割を高い信頼性が確認された第一原理分子動力学計算法を用いて電子レベルでより深く解明し、価電子濃度の観点から有効と計算された材料のみ、実験で検証し、代替材料が創出されると、大きな学術的な波及効果がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Ni-Al-(0%, 5%, 10%, 15%Pt)三元系材料を評価し、白金元素の添加により、生成した酸化層のミクロ組織から界面の原子配列至るまで、耐酸化性機能向上メカニズムを解明してきた。
そして、繰返し酸化試験でトップコート/基材界面の密着性、およびコーティングシステムの耐久性も調査しました。第一原理分子動力学シミュレーションの結果では、白金の添加により(Al 原子をPt 原子と置換する)界面の結晶構造が大きく変化する。高温酸化界面(Ni,Pt)3Al/Al2O3の密着性などの変化も計算し、酸化界面における添加元素(白金)の誘起反応を解明してきた。特に結晶構造が添加元素の価電子濃度に大きく依存することが分かってきた。この研究成果はMaterials Research Innovations誌に掲載されることになった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は、電子の足し算の理論を用い、元素の化学反応性は原子内の核外電子の状態で決まる理論に基づき、原子をいくつか組み合わせた化合物は、希金属・白金元素と相似の化学的な性質をもつ、稀少元素と同様な誘起反応が再現できる代替元素の探索を行う。
そして、有効と計算された白金族元素代替材料、および火山灰と反応させる強い結合エネルギーを持つ酸化アルミニウム系化合物に限って化合物の溶射粉末を作製し、プラズマ溶射によって施工する(図7)。実際に施工した遮熱コーティングにおいて代替材料の添加による腐食, および酸化抑制の有無を高温の実使用環境(1150°C/1時間 繰返し酸化試験;1300°C等温酸化試験)で検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に代替材料の作製を集中的に行い、実際にコーティングシステム実証試験を実施する。これらの工程は比較的高額な予算を必要とするため、化合物の溶射用粉末と電子ビーム物理蒸着(EB-PVD)用のインゴットを計上した。また、学会において論文発表を行うため、旅費などを必要とする。
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次年度使用額の使用計画 |
1.化合物の溶射用粉末を作製し、基材上プラズマ放射によって施工する。 2.電子ビーム物理蒸着によるセラミックストップコート(遮熱コート:TBC)をプラズマ放射によって施工したコーティングの上にさらに施工する。 3.代替材料の添加による腐食、および酸化抑制の有無を高温の実使用環境(1150°C/1時間繰返し酸化試験、1300°C等温酸化試験)で検証する。
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