研究実績の概要 |
発電ガスタービンやジェットエンジンの運航時の高効率化で、大幅に燃料消費抑制、CO2 排出削減の両観点から、従来よりも高いガス燃焼温度が求められ, 高温部品を高温の燃焼ガスから守るために用いられる欧米で開発された耐熱コーティング材(GE:Pt-Al, RR:Pt-diffusion)に白金族希少元素を更に添加することが要求されている。しかし、特定の地層にppm オーダーしか含まれない白金資源の採掘には、大きな環境破壊が伴い、自給率が乏しい日本にとって、基幹産業を支える高付加価値な部材の原料供給リスクという問題がある。本研究では、可能な限り現実に近い高温酸化界面(Ni,Pt)3Al/Al2O3のモデルを構築し、第一原理分子動力学法に基づく白金族元素添加の効果を解析すると共に、実験を行い酸化界面において白金族元素と同様な誘起反応が再現できる代替元素の探索を行う。代替元素の探索の指標として、価電子濃度(電子の足し算の性質)を用いる。これは、元素の化学反応性は原子内の核外電子の状態で決まるという理論に基づいており、原子をいくつか組み合わせた化合物は、白金族元素と相似の化学的な性質をもつと考えられる。
研究代表者はNose-Hoover法に基づいて、第一原理分子動力学法で化合物の添加による界面における誘起反応を評価し、白金の添加により界面の結晶構造が大きく変化することがわかった。特に結晶構造が添加元素の価電子濃度に大きく依存することを証明し、この研究成果はActa Materialia、Materials Research Innovations誌に掲載されることになった。さらに、第一原理分子動力学法で火山灰と強い結合エネルギーを持つと予測された酸化アルミニウム系化合物を遮熱コーティングシステムの一部として作製し、今まで防止できなかった火山灰の高温融解による遮熱コーティング材への浸透や腐食などを融点制御機構によって、火山灰がエンジンの燃焼温度まで安定な固体として存在できることを証明した。
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