研究課題/領域番号 |
24710085
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研究機関 | 宮崎県木材利用技術センター |
研究代表者 |
須原 弘登 宮崎県木材利用技術センター, 材料開発部, 主任研究員 (90423540)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | バイオエタノール |
研究概要 |
本年度の研究では、タケに対して高い選択的リグニン除去能をもつPunctularia sp. TUFC20056を用いたバイオエタノール生産技術確立のために、本菌が持つリグニン分解酵素の一つであるクラスIIペルオキシダーゼ(CIIP)に着目し、本酵素のクローニングを試みた。既報の文献をもとに、CIIP保存領域に対するディジェネレートプライマーを作成しクローニングを行ったところ、1つのCIIPクローンを得ることができた。このクローンはその配列から、典型的なマンガンペルオキシダーゼ(MnP)型であることが示唆された。 また、タケはイネ科植物であり、本邦では同じイネ科に属するイナワラ・ススキなどもバイオマス資源として期待できることから、Punctularia sp. TUFC20056を用いてイナワラの脱リグニンを試みると同時に、脱リグニン処理後糖化酵素を添加し建機条件に切り替えることで同時糖化発酵が可能かを検討した。 基質にイナワラ、対照としてコナラを用いて検討した結果、同菌はコナラよりもイナワラに対して高いリグニン分解選択性を示した。また、前処理したイナワラのメイセラーゼによる糖化では還元糖生成率が無処理区 (11.9%)および対照区として用いたCeriporiopsis subvermispora処理区(9.7%)の4倍近くの46%まで増加した。 イナワラおよびタケの同時糖化発酵試験の結果、タケでは8週間の前処理後、360時間の発酵で理論収率の25.2%のエタノールを得ることができ、イナワラでは4週間の前処理後、360時間の発酵で理論収率の37.5%のエタノールを得ることができた。 本年度の研究成果をもとに、次年度は前処理過程におけるリグニン分解酵素の発現挙動の解析、培養温度などの最適条件の検討やイナワラ以外のイネ科植物を用いた検討を計画している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時に作成した「研究計画・方法」をもとに研究を進めているが、本計画の初年度の大きな二つの柱である「リグニン分解関連酵素の遺伝子配列の取得」と「タケ以外のイネ科植物での検討」をおよそ達成することができた。リグニン分解酵素は1クローンのみの取得であることから、アイソザイムの有無が確認できておらず、検討を要する。また、イナワラ以外のイネ科植物を用いた検討ができていないので、順次取り組む予定である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度の研究では、タケの前処理期間中のCIIP発現挙動の解析と、温度などの培養条件を検討することで、Punctularia sp. TUFC20056による効率的な処理方法を見出すことを目標とする。また、検討済みのタケ、イナワラ以外のイネ科植物を用いた検討も行い、本菌の適用可能性を明らかにしたい。 また、このような開発研究では試験管スケールでは良い成果が得られても、試験スケールを大きくすると、効率などが大きく変わることが多い。そのため次年度はスケールを大きくした処理条件(培養ビン、栽培袋など)で本菌による生物処理を行うことも検討している。 バイオエタノール生産はエタノールのみを目的生産物とすると、高コストになりがちである。このことから、エタノール生産までの過程で、有用な副生成物(生理活性物質)の取得を試み、有価物を得ることで、エタノール生産コストを相殺し、最終的なエタノール生産コストの低減を図りたいと考えている。そのため生産物の市場販売へのハードルが低い、食用担子菌類を本課題での検討に含めることも予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は酵素発現解析などを行う予定であることから、RT-PCR用酵素などの遺伝子解析関連試薬類の割合が大きくなることを予定している。培養条件の最適化を検討予定であることから、当初2年目にインキュベータの購入を予定していたが、研究の進度に併せて今年度予算で購入したため、次年度の購入は行わない予定である。そのため、次年度の検討では試験サイズのスケールアップを検討していることから、基質となるタケやイナワラなどの粉砕物を作成するための木材破砕機を備品として購入する予定である。
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