研究概要 |
本研究ではタケに対して選択的リグニン分解能を示すPunctularia sp. TUFC20056を用いて、タケ及びイナワラのエタノール発酵を試みた。本菌はリグニン分解酵素のクラスIIペルオキシダーゼ(CIIP)としてMnP活性を持ち、得られたCIIP遺伝子は典型的なMnP型であった。本年度はリグニン分解酵素活性が最大となる至適培養条件を検討した。酸化酵素は固相培養系において高い活性を示し、3~4週目に最大活性を迎えた。今回の実験ではポリフェノールオキシダーゼ(PO)活性とラッカーゼ(Lac)活性が同様の挙動を示し、LacはPOの基質として用いた2,6-dimetoxy phenolを酸化できることから、 酸化酵素の活性は主にLac活性に由来すると考えられた。過酸化酵素ではマンガンペルオキシダーゼ(MnP)活性が見られ、液相培養系で3週目に最大活性を迎えた。その活性はLacに比べると弱かった。至適培養温度はいずれの酵素も21-25℃の範囲であった。至適酵素活性の検討からリグニン分解にはLacの寄与が大きいことが示唆された。 本菌を用いてタケ及びイナワラの処理の検討をした。本菌はセルロースを直接発酵できなかったため、前処理した基質をそのまま発酵は出来なかったが、メイセラーゼによる酵素糖化を行うことで、エタノールを生産が可能であった。タケの処理では1か月で酵素糖化率が10.0%(無処理区0.8%)、イナワラでは1か月処理で46%(無処理区11.9%)まで改善した。 酵素糖化後、嫌気条件下で360時間の発酵を行うと、タケで理論収率の25.2%、イナワラでは理論収率の37.5%のエタノールを得ることができた。
|