研究課題/領域番号 |
24710087
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
橘 熊野 群馬大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60504024)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 循環再生材料設計 / グリーンケミストリー / 自己組織化高分子 / 環境関連高分子 / 高分子反応・分解 / 生分解性物質 / 高分子材料合成 / 非共有結合高分子 |
研究概要 |
本研究課題の主目的は「バイオマス由来の新規生分解性高分子の創成」と「超分子ポリマーによる生分解性の制御」である。 本年度の研究から下記の成果を得た。 【非可食バイオマス資源から柔軟性に富む新規生分解性ポリエステルの合成と生分解性評価】非可食バイオマス由来化合物であるフルフラールから化学合成によって、オキサビシクロ骨格を有する新規バイオマス由来ポリエステルを得た。ホットプレス法によりプレス成形することで、透明で柔軟なフィルムを得た。バイオマス由来ポリエステルの生分解性評価は生化学的酸素要求量(BOD)法によって評価した。その結果、バイオマス由来ポリエステルは柔軟性に富んでおり、オキサビシクロ骨格を有するポリエステルが生分解性を有することを明らかにした。また、既存の生分解性ポリエステルとの共重合化により、強度と柔軟性が優れたバイオマス由来共重合ポリエスエルを得るに至った。 【ポリ乳酸末端への機能団の導入と相補的相互作用による超分子ポリマー形成】生分解性高分子であるポリ乳酸の超分子ポリマー化の第一段階として、ポリ乳酸末端機能団同士の相補的相互作用による超分子ポリマー形成を検討した。ポリ-L-乳酸末端とポリ-D-乳酸末端のそれぞれに、相補的相互作用を有する機能団を導入した。その結果、機能団同士の相補的相互作用によって自己集合的にポリ乳酸ステレオコンプレックスを形成することを実証した。その過程において、機能団の大きさやポリ乳酸の方向性が、相補的相互作用によるポリ乳酸の自己集合にとって重要な役割を果たしていることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、非可食バイオマス資源から柔軟性に富む新規生分解性ポリエステルの合成と生分解性評価を行い、ポリ乳酸末端への機能団の導入と相補的相互作用による超分子ポリマー形成を行った。すなわち、「バイオマス由来の新規生分解性高分子の創成」と「超分子ポリマーによる生分解性の制御」という主題に関する本年度の課題は、おおむね順調に進展していると言える。 一方で、平成24年度の当初計画で分子設計を行ったブロックポリマーの合成には至っていない。研究を進めていく過程において、「ポリアニリンとのブロックポリマーではなく、ポリ乳酸と結合した機能団間の相補的相互作用を利用することで超分子ポリマーを創成すること」が、本研究を遂行する上で、物性改善および生分解性制御において優れていると考えたからである。実際にその研究結果から、「機能団の大きさ」と「ポリ乳酸の方向性」が、超分子ポリマー形成にとって重要であるという新たな科学的知見を得るに至った。これはポリ乳酸を基本骨格とする超分子ポリマーの機能制御にとって重要な知見であり、次年度以降の研究として超分子ポリマーの構築と崩壊による生分解性制御が可能になると考える。 また、生分解性高分子の基本骨格としてオキサビシクロ骨格が利用できることを初めて証明した。これは、生分解性高分子設計において、オキサビシクロ骨格が生分解性と柔軟性を付与可能な新奇モノマーユニットになり得ることを意味しており、当初の計画以上の成果である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の目標である「バイオマス由来超分子ポリマーによる生分解性の制御」の実現に向けて研究を推進する。そのために、本年度創成した新規バイオマス由来ポリエステルの生分解性を微生物学的手法を用いて詳細に評価し、新たな生分解性ポリエステルとしての可能性を明確にする。また、超分子ポリマーとして、生分解性ポリエステルに相補的相互作用を有する様々な機能団を導入し、その相互作用を制御することで生分解性を制御することを目指す。 具体的には、創成した生分解性ポリエステルの分解微生物をクリアゾーン法によって単離し、単離微生物の遺伝学的解析、単離微生物による様々な生分解性高分子の分解性評価などを通じて、その微生物学的特徴を明らかにしする。可能であれば分解酵素を単離し、酵素の特徴を明らかにする。また、超分子ポリマーの生分解性の評価のために酵素分解試験および微生物分解試験を行うと同時に、超分子構造を崩壊させる外部刺激や酵素・微生物の導入によって、【超分子構造崩壊→生分解性制御】の機構を構築する。それらの結果を元に、バイオマス由来超分子ポリマーにおける生分解性制御機構を構築する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度当初はアメリカでの国際学会発表に360千円(出張費+登録費)、バイオマス由来度測定に24千円を計上していたが、これを次年度以降に繰り越した。それ以外は概ね計画的に使用している。 平成25年度は、平成24年度分の繰り越しを含めて計画的に使用する。具体的には、ポリマー合成のための器具一式に900千円、試薬一式に400千円を使用する。バイオマス由来度および生分解性評価のために200千円を使用する。以上の研究費は年度を通じて、必要になった際に使用する。 2013年9月に英国で開催される21th BioEnvironmental Polymer Society (BEPS) annual meetingで成果発表をするために340千円を使用する。
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