研究課題/領域番号 |
24710087
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
橘 熊野 群馬大学, 理工学研究院, 助教 (60504024)
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キーワード | 循環再生材料設計 / グリーンケミストリー / 自己組織化高分子 / 環境関連高分子 / 高分子反応・分解 / 生分解性物質 / 高分子材料合成 / 非共有結合高分子 |
研究概要 |
本研究課題の主目的は「バイオマス由来の新規生分解性高分子の創成」と「超分子ポリマーによる生分解性の制御」である。昨年度終了後に「創成した新規バイオマス由来ポリエステルの生分解性を微生物学的手法を用いて詳細な評価」と「超分子ポリマーとして、生分解性ポリエステルに相補的相互作用を有する様々な機能団を導入し、その相互作用を制御することでの生分解性制御」を本年度の研究推進方針として策定しし、本年度はその推進方針に基づいて研究を進めた。 1. 創成した生分解性ポリエステルの分解微生物をクリアゾーン法によって評価し、微生物の遺伝学的解析・分解性評価などを通じて、その微生物学的特徴を明らかにし、分解酵素の正体を推測できるに至った。 2. バイオマス由来の生分解性高分子であるポリ乳酸の末端機能団同士の相補的相互作用による超分子ポリマー形成を検討した。本年度は末端機能団を有するポリ乳酸の簡易合成方法として、動的共有結合を用いた交換反応を開発した。これにより、様々な機能団を有するポリ乳酸を容易に合成できるようになり、機能団の違いによる影響をより詳細に評価できるようになった。それを用いることで機能団の大きさやポリ乳酸の方向性および分子量の影響などの詳細を評価した。 3. 新たなテーマとして、超分子ポリマーの分野で注目されている動的共有結合を生分解性制御に利用することを検討した。生分解性高分子主鎖中に動的共有結合性官能基を導入し、動的共有結合の開裂制御による生分解性の制御を行った。その結果、外部環境を制御することで、生分解性のオン・オフが自在にできる生分解性高分子の開発に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の主目的は「バイオマス由来の新規生分解性高分子の創成」と「超分子ポリマーによる生分解性の制御」である。 1. バイオマス由来の新奇生分解性高分子の創成は昨年度でほぼ完結しており、本年度はその生分解性の詳細な評価を行った。その結果、その分解微生物として数種類を特定することができ、その遺伝学的・微生物学的分類分けから、分解酵素としてクチナーゼ様の酵素が働いていることを見出した。 2. 超分子ポリマーによる生分解性制御をとして本年度は、バイオマス由来の生分解性高分子であるポリ乳酸末端への機能団の導入と相補的相互作用による超分子ポリマー形成の詳細を明らかにした。この成果は、生分解性高分子に超分子ポリマーの概念を導入した数少ない例である。 3. 本年度の研究推進方針であげた上記2つに加えて、新たな生分解性制御方法として、超分子ポリマーの研究分野で注目されている動的共有結合を用いた生分解性制御を行った。その結果、本研究の最終目標である超分子結合の制御による生分解性制御を立証できた。 すなわち、「バイオマス由来の新規生分解性高分子の創成」と「超分子ポリマーによる生分解性の制御」という主題に関する本年度の課題は、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の目標である「バイオマス由来超分子ポリマーによる生分解性の制御」の実現に向けて研究を推進する。 1. 超分子ポリマーとして、生分解性ポリエステルに相補的相互作用を有する様々な機能団を導入し、その相互作用を制御することで生分解性を制御することを目指す。超分子ポリマーの生分解性の評価のために酵素分解試験および微生物分解試験を行うと同時に、超分子構造を崩壊させる外部刺激や酵素・微生物の導入によって、【超分子構造崩壊→生分解性制御】の機構を構築する。 2. 2つ目は動的共有結合の制御による生分解性制御を、環境中行う場合の詳細な評価方法を開発する。動的共有結合をの開裂を制御する環境を作り出すような試験装置を開発し、その生分解性の詳細な評価を行う。 それらの結果を元に、バイオマス由来超分子ポリマーにおける生分解性制御機構を構築する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は大学運営費を当初想定していたよりも相当多く使用することができた。本研究課題では、そちらを優先して使用することで今年度は問題なく研究を推進できた。一方で、最終年度には当初予定していなかった生分解性の評価方法の開発を行うことを研究として追加することになり、そのためには新たな器具などを揃える必要が出ている。以上のことから、残額を次年度へ繰り越す。 分解評価のための器具一式に6,000千円、合成および生化学・遺伝子関連の試薬一式に8,000千円、計算化学によるシミュレーションのためのIT機器として4,000千円を使用する。以上の研究費は年度を通じて、必要になった際に使用する。 2014年9月に長崎で開催される高分子討論会で成果発表をするために1,100千円を使用する。
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