研究課題/領域番号 |
24710088
|
研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
金子 大作 九州工業大学, 若手研究者フロンティア研究アカデミー, 准教授 (90467126)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 国際研究者交流 |
研究概要 |
本研究の中核をなすAFM測定では、グラフト化の過程が最も重要である。H.24年度に行った実験概要を以下に説明する。まず、Si3N4カンチレバーをUVオゾン洗浄装置で処理し、表面にOH基を導入する。窒素雰囲気化でアミノ基を持つシランカップリング剤を用い、カンチレバーにアミノ基を導入する。その後、PEGの方末端のアミノ基が保護されたグラフト鎖を導入する。その後、保護基を外し、カルボキシル基を有する接着分子であるカフェ酸とアミノ基を反応させ、末端に接着性官能基を持つ、グラフトカンチレバーを得た。次にこのカンチレバーを用いて、カフェ酸の単分子接合力の測定をガラス基板を相手として水中で行った。具体的にはAFMのフォースカーブモードで、①カンチレバーを徐々に基板に近づけ、②基板やカテコール分子にカンチレバーが触れるとカンチレバーが撓み出し、斥力を検出する。③適当に押し込んだところで、今度は逆にカンチレバーを引き離す方向へ動かす。撓みが無くなったところでファンデルワールス引力が小さく検出され、すぐに検出力は0に戻る。④カテコール基が基板表面にナノ接合し、グラフト鎖が伸び始め、引き離しがグラフト鎖長に達したところで伸びきり、引力が最大値を示し単分子接合力が測定される。⑤接着がはずれ、カンチレバーの検出力は再び0に戻る。その結果、カフェ酸とガラスの相互作用力は300pNから700pNである事が分かった。これは通常の水素結合よりも10倍程度強く、共有結合の10分1程度である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最大の課題であった、カンチレバーに接着性官能基をグラフト修飾する事に成功し、原子間力顕微鏡のフォースカーブモードで接着分子の単分子ナノ接合力の測定に成功している。また、その値が強結合型の水素結合に匹敵する値である。この値は、事前に行った量子科学シミュレーション結果が示唆していた、強結合型の水素結合力を裏付ける実験的な値と合致しているためである。
|
今後の研究の推進方策 |
当初計画通り、引き続き様々な接着性天然分子を用いて、種々の基板へのナノ単分子接合力を測定してゆき、ポリフェノール由来の接着剤の接着機構解明に注力して行く。
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究代表者は、平成24年度中に異動となり新しく研究室を立ち上げる事となった。約3カ月の間、研究室立ち上げに時間を割く事になり、その間研究遂行が滞ったので予定していた研究経費を繰り越す事となった。現在は新しい環境でマンパワーが不足している状況であるので、繰り越した研究費は研究補助員の雇用など人件費に重点を置き、執行して行く予定である。
|