研究概要 |
本研究では我々が創製したエポキシ樹脂に匹敵する接着強度をもつ植物由来接着剤の接着機構解明し,その創製物が医療分野へ応用可能かどうかを探ることを目的としている。まず,原子間力顕微鏡(AFM)を用いたカテコール基をもつ接着分子やその類似分子の単分子接着力測定を行った。次にそれらを接着性分子として用いて創製した接着剤高分子を歯髄細胞を用いた細胞毒性試験(MTT試験)を行った。AFMを用いた単分子接着力測定の結果は,芳香環上の水酸基が増えるにつれ接着力が増加し、2つの水酸基の位置関係についてはオルト位(カテコール基)の分子の接着強度が一番強いことが明らかとなった。また量子科学計算による接着シミュレーションでは、カテコール基の酸素原子と被着材(Siの1,1,1面の部分参加)表面の酸素原子の間の距離が通常の水素結合の約3/4と通常よりも結合距離が近いことが予想された。そして歯髄細胞を用いた当接着剤の細胞毒性試験では、市販の歯科用接着剤を含む培地で培養した歯髄細胞が24時間で生細胞がほぼいなくなったのに対し、当接着剤同条件下で培養72時間が経っても何ら細胞毒性が無いことが確認できた。以上の結果から芳香環上の水酸基の数・位置と接着力との関係、カテコール基の水素結合は通常の水素結合とは異なること、また細胞毒性が全くなかったことから医療用接着剤として応用が可能だということを明らかにすることができた。
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