研究課題/領域番号 |
24710090
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
柳田 さやか 東京理科大学, 基礎工学部, 助教 (40579794)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 光触媒 / アンモニア / ヘテロポリ酸 / ガラス / 環境浄化 |
研究概要 |
アンモニアは動植物の腐敗、排泄物の分解等によって生じる悪臭物質である。病院や老人ホーム、動物実験室等ではしばしばアンモニアの臭気が問題となっており、生活環境からの迅速な除去が求められている。本研究はアンモニアの処理に適した光触媒材料の開発と、分解過程の定量的評価を目標としている。平成24年度は分解実験系の構築と、光触媒の基材となる多孔質ガラスファイバの作製条件の検討を行った。 1, アンモニア分解の実験系の構築 アンモニアの光触媒による分解過程を評価するため、実験系の構築を行った。大容量のテドラバックと分解容器を連結し、閉鎖循環系で希薄濃度のアンモニアの吸着・分解の過程を調査することが可能になった。また、光触媒表面に付着した分解生成物を評価するため、イオンクロマトグラフィやイオン電極等を用いて溶出物の同定を試みた。 2, ガラスファイバの多孔化と光触媒担持 光触媒反応は表面反応であるため、効率的に有害物の分解を行うには、高比表面積の担体上への光触媒の固定化が有効である。また、透光性のある担体は内部を励起光が伝播するため反応場を大きく出来る利点がある。本研究では、10 マイクロメートル径の透明なガラスファイバを塩酸中で水熱処理することによりガラス成分の一部を溶出させ、表面にミクロ孔を持つ担体を作製した。この担体上に酸化チタンを担持した複合体は2-プロパノールの吸着・光触媒分解実験において、水熱処理を行わなかった試料と比較し非常に高い吸着能を示し、また中間生成物であるアセトンの気中放出を抑制することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は低濃度のアンモニアの光触媒による分解過程を調べるため、テドラバックと光照射容器をチューブポンプで連結した閉鎖循環系の実験系を作製した。当初の計画では分解物の評価方法を確立した上で空気中の湿度がアンモニアの吸着や光触媒分解に及ぼす影響を調査する予定であったが、実験条件の検討に予定外に時間がかかったため、湿度を変えた場合の分解実験については未実施である。分解生成物の評価については、光触媒表面の化学種をIRやイオンクロマトグラフィ、イオン電極等を用いて測定することを試みている。 光触媒の基材として用いる多孔質ガラスファイバの作製については、当初の計画通り原料であるガラスファイバの水熱処理時の温度と時間が多孔質ガラスファイバの構造に及ぼす影響の調査を行った。ファイバの水熱処理時間が長くなるほど表面のミクロ孔が増えるが、マクロな亀裂も発生するため材料の強度を考えると長時間の処理は適切ではない。実験条件の検討により95度30分の処理条件で、ほとんど大きな亀裂が発生せずファイバの表面を多孔化できることを明らかにした。この多孔質ファイバを用いて2-プロパノールをプローブとして行った吸着試験では、未処理ファイバではほとんど吸着が起こらなかったが水熱処理ファイバはごく短時間で容器中の全てのプロパノールを吸着した。今後はこのファイバの吸着特性の評価と、ファイバへの光触媒コーティング方法の検討を行っていく。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度には主に粉末の酸化チタンを用いて、アンモニアの光触媒分解実験を行った。今後はこれに加えて多孔質担体上に固定化した酸化チタンを用いて低濃度のアンモニアガスの光触媒分解実験を行う予定である。光照射による分解容器中のアンモニア濃度の経時変化を検知管によって測定するほか、光触媒上に吸着したアンモニアや生成物の一つである硝酸根の分析を行う。連続的に発生するアンモニアの光触媒分解においては、触媒上に付着した硝酸根により光触媒の活性が低下することが考えられる。そこで繰り返しの使用による光触媒活性の変化と、使用後の触媒を洗浄した後の活性について調査を行う。また固体酸の一種であるヘテロポリ酸と酸化チタンを複合化した材料について分解実験を実施し、吸着・分解速度や生成物について調査を行う。 一方で、触媒担体となる多孔質ガラスファイバの特性について調査を進めていく。水熱処理によって生じたミクロ孔の細孔径分布について詳細に調査するほか、アンモニア昇温脱離法でアンモニアの吸着能及び材料の固体酸性の評価を行う。さらに吸着プローブを他の分にした場合の吸着特性を調べるなどして、吸着材料としての多孔質ガラスファイバの特性を明らかにする。また、このファイバに酸化チタンをコーティングした際に吸着能が維持できるか、コーティング方法と比表面積・吸着能の関係を調査し最適な担持方法について検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度の予算では光源装置や光触媒反応容器、分析の際に必要となる検知管等の消耗品を購入予定である。また、連携先の機関で測定を行う際の交通費や成果発表のため学会参加に要する旅費などを予算に計上している。
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