研究課題/領域番号 |
24710094
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
近藤 孝文 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (50336765)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 量子ビーム産業応用 / 電子・エネルギー移動 |
研究概要 |
平成24年度は、フェムト秒パルスラジオリシスシステムの測定波長を拡張し、代表的な非極性液体であるドデカン中でジェミネートイオン再結合の詳細な測定を行った結果、励起ラジカルカチオンの間接的証拠を得て、カチオン捕捉剤および芳香族捕捉剤による励起ラジカルカチオンの反応性を解明し、これまで非常に困難であったドデカンのラジカルカチオン及び初期イオン化G値を決定した。 ① 励起ラジカルカチオンの間接的証拠:代表的な非極性溶媒であるドデカンで、近赤外領域の800 nmでラジカルカチオンを測定し、1200 nmで余剰電子の時間挙動を詳細に測定した結果、長時間領域では再結合による同じ減衰挙動を示し、初期過程は全く異なる挙動を示した。このことは観測しているラジカルカチオンが、従来モデルにおけるジェミネートイオン再結合していることを確認したと共に、前駆体である励起ラジカルカチオンから生成することを示した。 ② 励起ラジカルカチオンの反応性を解明:ドデカンラジカルカチオンの時間挙動のトリエチルアミン(TEA)等のカチオン捕捉剤、ビフェニル(Bp)等の芳香族(両)捕捉剤の濃度依存性を測定し、モデルに基づいてモンテカルロシミュレーションを行った結果、励起ラジカルカチオンが3×1011[M-1s-1]に達する高い反応性を持つことが明らかとなった。 ③ ドデカンのラジカルカチオン及び初期イオン化G値を決定:芳香族捕捉剤(ビフェニル)の濃度依存性を測定した結果からドデカンラジカルカチオンとビフェニルラジカルカチオンの比を得て、ドデカンラジカルカチオンのモル吸光係数を決定し、G値を求めた。励起ラジカルカチオンを含んだモデルとの比較により、これまで困難だったドデカンの初期イオン化G値を決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は、阪大産研で開発されたフェムト秒パルスラジオリシスシステムを活用するのみならず、新機能付与など発展することにより、代表的な非極性液体であるドデカン等の凝縮相中での量子ビーム誘起電荷移動過程解明を推進している。様々な種類の活性種を測定するために、まず測定波長領域の拡張を図った。その結果、240 ~1600 nmの波長領域での測定に既に成功し、過渡吸収時間挙動と過渡吸収スペクトル変化を得た。測定波長の拡張により可能となった、ドデカンのラジカルカチオンとイオン化によって生じた余剰電子のジェミネーとイオン再結合を詳細に測定し、モデルに基づいたシミュレーションを行ったことにより、これまで非常に困難であったドデカンのラジカルカチオンおよびドデカンの初期イオン化G値を決定することに成功した。本研究の進捗状況は順調である。現在は特に紫外領域に着目しており、ドデカンの分解および水素発生に関係しているアルキルラジカルの挙動について、新しい知見が得られつつある。現段階でも革新的な成果が数多く得られており、今後も予定以上の成果が見込まれる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、現在進行中のドデカンの分解および水素発生に関係しているアルキルラジカルの生成・反応挙動を解明し、設計した温度可変セルホルダーを用いて温度を変化させた場合の電子捕捉反応速度定数やカチオン(ホール)捕捉反応速度定数を測定し、高反応性活性種の特性や反応機構を解明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品として、試料など化学薬品、試料調整のためのガラス器具、パルスラジオリシス測定のための特注光学研磨薄板石英セル、紫外光用ミラー、光学部品保持器具等を購入する。温度制御セルホルダーおよびコントローラーの高度化により精度を向上する。他に研究成果の論文投稿費や、国内・国際会議での成果発表の旅費として使用する。
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