研究課題
平成25年度は、ドデカンの放射線分解過程と放射線化学初期過程の関係を明らかにするために、これまで困難だった紫外フェムト秒パルスラジオリシスシステムを開発し、それを用いて、ドデカン中のアルキルラジカル生成過程を研究した。結果7 psの非常に速い生成を観測した。その結果ドデカンの放射線分解に、励起ラジカルカチオンが直接的に関与している可能性が高いことを見出し、放射線化学分野の重要な新しい知見を得た。以下に詳細を示す。①紫外フェムト秒パルスラジオリシスシステムの開発:紫外域240 nmで観測されるアルキルラジカルを測定するために、紫外用の光学系、検出器、ファイバ等を導入し、フェムト秒パルスラジオリシスの測定波長領域を240 nmまで拡張した。②パルスラジオリシスシステムの安定化と測定手法の高度化:ノイズ源の切り離し、検出器の遮蔽等のノイズ対策を行うとともに、積算回数のみならず、測定回数を大幅に増やす等の統計処理により従来の1/10以下の強度(1 mO.D.以下)の過渡吸収が観測可能となった。③ドデカン中のアルキルラジカル生成過程の研究:核燃料再処理における溶媒の放射線分解や、次世代量子ビームナノファブリケーションでパターン形成の基礎過程となる鎖切断で生じるアルキルラジカルの生成過程をドデカン中で研究した結果、7 psの非常に速い生成を観測した。その結果ドデカンの放射線分解に、励起ラジカルカチオンが直接的に関与している可能性が高いことを見出した。④水中のヒドロキシラジカル直接観測の開拓:放射線治療において重要な活性種であるける水中のヒドロキシラジカルをフェムト秒で測定する環境が整った事により、ヒドロキシラジカルの反応挙動の直接観測に道を拓いた。
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Raluca Radiat. Phys. Chem.
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http://www.sanken.osaka-u.ac.jp/labs/bsn/yoshilab.htm