研究課題/領域番号 |
24710095
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
内田 貴司 東洋大学, 学際・融合科学研究科, 准教授 (90470343)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | フラーレン / イオン源プラズマ / 原子内包フラーレン / 電子サイクロトロン共鳴 |
研究概要 |
原子内包フラーレンの生成、分離や表面修飾等のプロセスにおいて、その効率化が大きな課題となっているが、生成についてはプラズマを用いた手法が非常に高効率であることがわかってきている。本研究はプラズマ法を生成のみならず分離・表面修飾の手法として発展させることが目的である。 本研究では1. 電子サイクロトロン共鳴(ECR)イオン源プラズマ中での原子内包フラーレン生成を実証し、さらに2. プラズマを用いた処理による原子内包フラーレンの表面修飾技術を構築する。以下に各課題に関しての当該年度の研究実績の概要を述べる。 ECRイオン源プラズマ中での原子内包フラーレン生成の実証については、アルゴンとC60を用いたアルゴン内包フラーレンの生成を試みた。アルゴンガスおよびC60蒸気をECRイオン源プラズマチェンバーに導入し混合プラズマを生成し、その中に含まれるイオンを分析したところ、アルゴン原子とC60分子の和の質量のイオンを確認出来た。 プラズマを用いた原子内包フラーレン表面修飾技術についてはECRイオン源とそのビームラインに取り付け可能な表面修飾用プラズマ源を有する真空容器の開発を行った。2.45GHzのマイクロ波をダイポールアンテナにより供給する機構と低圧力でプラズマを維持するために永久磁石をダイポールアンテナ直近に配置し、ECR点を形成出来るように数値計算により構造や仕様を考え設計・製作した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
原子内包フラーレン生成の実証については当初、鉄とC60の混合プラズマによる生成を計画していたが、鉄蒸気供給のための誘導加熱蒸発源の不具合により鉄が使用出来なくなりアルゴンガスに変更した。鉄蒸気供給については、ハロゲン化鉄等を代替として用いるために準備を行い、ほぼ使用準備は完了した。使用に際しては、プラズ真生成条件等の検討を行う必要があり、それらが完了すれば本研究課題の鉄蒸気供給源として利用する。 また、表面修飾用プラズマ源に関しても当初、高周波放電によるプラズマ源を計画していたが、プラズマ源の仕様を再度検討した結果、イオンビーム輸送や試料の回収(堆積)やその後の分析等において低圧力下での実験が必要であると判断した。理由は主に本研究の特色である、1台の装置で原子内包フラーレンの生成と分離、さらに表面修飾を行う為に低圧力での放電によるメリットが大きいと判断したためである。従って、高周波放電ではなく2.45GHzのマイクロ波で永久磁石を設置し電子サイクロトロン共鳴により低圧力でも放電を維持出来るプラズマ源とすることとし、設計や製作を行った。
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今後の研究の推進方策 |
原子内包フラーレン生成の実証については、アルゴンとC60の混合プラズマによるアルゴン内包フラーレン生成について更なる条件検討を行い、鉄とC60の混合プラズマによる鉄内包フラーレンの生成についても検討を開始する。生成したイオンはイオンビーム減速により基板上に堆積し回収する。回収した材料は液体クロマトグラフィーとレーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析により分析評価する。 プラズマを用いた処理による原子内包フラーレンの表面修飾技術を構築に関しては、水酸化フラーレンを作製するため、フラーレン薄膜に対して水蒸気プラズマ照射処理を行い、プラズマ処理した物質の評価は水溶性試験、および液体クロマトグラフィーにより行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
原子内包フラーレン生成については、消耗品としてシリコン基板やその他真空機器用の部材を購入するために研究費を使用する。 プラズマを用いた処理による原子内包フラーレンの表面修飾技術を構築に関しては、水蒸気供給に冷却した水を使用予定であり、冷媒の作製のための薬品を購入する。 さらに両研究課題で、材料の評価に液体クロマトグラフィーを使用するため、そのカラムを消耗品として購入する。 なお,本年度においては研究実施計画を再検討したことにより、次年度に繰越す研究費が生じた。その研究費については次年度予算と合算し消耗品費として使用する。
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