研究課題/領域番号 |
24710096
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
錦野 将元 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究副主幹 (70370450)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | レーザープラズマX線 / 軟X線レーザー / フレネルゾーンプレート / 放射線生物影響 |
研究概要 |
近年、X線自由電子レーザーに代表されるような超短パルス・高輝度X線源による応用研究が可能となりつつある。本研究では、超短パルス・超高強度レーザー技術による超短パルス高輝度X線光源とX線光学素子を組み合わせたレーザー駆動超短パルスX線マイクロビーム照射装置を開発し、X線照射によって誘発される放射線生物影響に関する研究を実施する。本年度は、軟X線レーザー(90eV)を細胞程度の大きさまで集光し、可視光顕微鏡下で試料(細胞)に照射することが可能な軟X線マイクロビーム照射装置の改造、X線光学素子を用いた顕微法、軟X線光源の開発を行った。 90eVの軟X線レーザーは大気を透過しないため、真空中から直接大気中の細胞へX線照射する手法が必要である。真空中のX線光学素子を電動で操作可能に変更し、同様に複数の厚さの軟X線フィルターを電動で変更可能にすることで任意の細胞へ任意の光子数により軟X線照射が可能な装置への改良を行った。軟X線用フレネルゾーンプレートを用いた約80倍の像倍率を持つ軟X線顕微手法の開発を行い、空間分解能で空間垂直方向0.2ミクロン、水平方向0.5ミクロンを達成した。今後、X線の光子エネルギーを高エネルギー化することで生物試料サンプル等へも使用可能な顕微手法へ改良していきたい。また、マイクロビーム照射や軟X線顕微鏡へも応用可能な高原子番号金属材料を用いた200~300eVのエネルギー領域の軟X線レーザープラズマX線源の開発を行った。 これらの実験の成果に関して、12th International Conference on X-ray Laser等の国際会議や応用物理学会等において発表を行った。今後、レーザープラズマ軟X線を用いた細胞照射実験及び、放射線生物影響に関する実験を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
軟X線レーザー照射装置において、X線の照射位置および照射線量を真空容器内の電動ステージで調整するための改造を終了した。照射装置に使用する軟X線多層膜球面鏡において反射、集光性能が劣化するという問題が発生したため、今年度、軟X線細胞照射実験による放射線生物影響確認実験には至らなかった。しかし、原因と考えられる軟X線光学素子基盤の研磨方法を変更した光学素子基盤の準備を完了させ、次年度において新しい軟X線用多層膜コーティングを行った後、照射実験を実施する予定である。また、生物試料観察にも応用可能なフレネルゾーンプレートを用いた軟X線顕微鏡手法を開発し、軟X線による細胞照射と同時に観察が可能な照射・観察手法について装置の検討を行っている。 これらとは別に、単一パルスの超短パルスレーザープラズマX線による放射線生物影響の確認を目標としたレーザープラズマX線光源の高効率化・高輝度化発生実験を開始している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度において軟X線レーザー照射装置の改造は概ね完了したため、同様にレーザープラズマX線照射装置についても多様な照射条件の照射が可能な照射装置への改造を進める。また軟X線照射装置の重要部分である軟X線集光光学素子の準備を早急に進め、照射性能の確認および照射実験を実施する。 また、高輝度レーザープラズマX線源の開発と集光性能評価、高空間分解能軟X線顕微法を軟X線照射装置と組み合わせた装置の高度化について検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
照射実験実施のための生物試料固定用の窒化シリコン薄膜および消耗物品、軟X線光学素子および調整機構の購入を予定している。また、研究成果についての学会発表及び論文投稿を検討しており、それらの旅費や投稿料として使用を計画している。
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