近年、X線自由電子レーザーに代表されるような超短パルス・高輝度X線源による応用研究が可能となりつつある。本研究では、超短パルス・高強度レーザー技術による「レーザー駆動超短パルスX線光源」と「X線光源素子」を組み合わせたレーザー駆動超短パルスX線マイクロビーム照射を細胞試料に行い、そこで誘発される放射線生物影響を調べた。さらに、軟X線光源の高輝度化に関する研究を実施した。具体的には、軟X線レーザーを細胞程度の大きさまで集光し、細胞試料に照射することが可能な軟X線マイクロビーム照射装置の開発とそれによる放射線生物影響研究、および水の窓領域の軟X線光源の高輝度化に関する研究を行った。真空中のX線光学素子および軟X線フィルターを電動で操作可能に変更することで、任意の細胞へ任意の光子数により軟X線照射可能な装置へ改良した。軟X線照射による放射線影響(DNA損傷)の生成メカニズムについては、DNA二本鎖切断の修復関連タンパク質の活性化を解析し、修復情報伝達機構へ与える影響や放射線応答について検討した。また、塩基損傷やDNA一本鎖切断の検出を行い、これらにより光子エネルギーの違いによる情報伝達の違いについて解析を行った。水の窓領域の軟X線発生については、時間分解X線分光計測を行い、その発生メカニズムと高輝度化にむけた検討を行った。これらの実験の成果に関して、SPIE Optics+Photonics(X-Ray Lasers and Coherent X-Ray Sources: Development and Applications X)等の国際会議において発表を行った。現在、軟X線照射による放射線生物影響研究に関する成果を投稿中である。
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