レーザーイオン源はターゲットにレーザーを照射してパルスプラズマを発生させる。そのプラズマはターゲット垂直方向に重心速度を持って膨張しながらイオン引き出し部までの自由空間領域を進行する。パルス幅と引き出される電流密度の間には相関があり、パルス幅はプラズマ発生部からビーム引き出し部までの距離に比例して増大し、電流密度はこの距離の3乗に反比例して減少する。そのため、必要なパルス幅を得るためにビーム引き出し部までの距離を決定すると、イオンの電流密度の制御が難しかった。本研究では、プラズマ発生部とイオン引き出し部の間にソレノイド電磁石を備えたプラズマ輸送路を導入することで、進行方向に垂直な方向へのプラズマの発散を軸方向磁場により抑制し、磁場強度によって電流密度を制御する技術の開発を行った。 まず、レーザーイオン源で発生するイオンのエネルギー分布の測定データを基にプラズマ輸送路中での軌道計算を行い、軸方向磁場を印加することで輸送路下流でのイオン電流強度の時間変化波形が変化することを明らかにした。そして、これを基にソレノイド電磁石の設計・製作を行った。またこれらと平行して、レーザー装置や電磁石電源の制御やファラデーカップによるイオン電流強度の時間変化を測定するプログラム開発を行うことで、各種パラメータを変更しながらの測定が効率的に行えるようにした。製作したソレノイド電磁石を用いてプラズマ輸送路を構築し、炭素プラズマの輸送実験を行った。その結果、磁場を変化させることで磁場の無い場合に比べて最大2.4倍までイオン電流密度を増大できることを確認した。
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