研究課題/領域番号 |
24710099
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
佐藤 博隆 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30610779)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | パルス中性子イメージング / 透過分光 / ブラッグエッジ / ひずみ / テンソルCT |
研究概要 |
本研究課題は、新概念CT法の開発により、中性子透過法をベースとしたひずみトモグラフィの実現を目指すものである。これは、現在開発を進めている新しい量子ビーム技術「パルス中性子イメージング」を更に発展させることにより、量子ビーム科学・画像工学・材料工学という広範な分野に資する研究テーマである。前半部に相当する平成24年度は、各種データ解析プログラム群の整備と、中性子回折ひずみ解析国際標準サンプル「VAMAS」を用いた最初の原理実証実験を実施した。解析プログラムの整備において最も注力した点は、新概念CT法「テンソルCT法」の開発である。シミュレーションスタディの繰り返しとなってしまい開発に時間を要したが、実験精度を上回る高解析精度プログラムが完成した。これにより、これまでのCT画像再構成技術では取り扱うことのできなかった物理量(ひずみ)をCT画像再構成することが可能となり、画像工学的に意義あることである。このプログラムを完成させると同時に、原理実証実験を茨城県東海村の大強度陽子加速器施設J-PARC MLF BL10「NOBORU」において実施した。多数の投影データを取得するために、KEK-北大の連携で開発が進められている高解像度中性子イメージング検出器「GEM」を借用・利用した。設置誤差の小さな専用治具やバックグラウンドを低減するための中性子遮蔽材を導入し、実験誤差の低減を行った。結果、シミュレーション計算に近い実験データが得られた。この実験データをテンソルCT法により画像解析し、トモグラフィックなひずみ画像を取得した。その結果は、シミュレーション計算に近いものであったが、特に径方向ひずみに関して誤差が大きかった。次年度は、この実験結果を基に誤差の原因を究明し、さらなるプログラムの改良を行い、手法の完成を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画の通り今年度は、テンソルCT法の開発と、J-PARC MLF BL10にて最初の原理実証実験を予定通り実施することができた。前者については、予定を上回るデータ解析精度を達成することができたが、汎用性に関しては予定よりも拡張することができなかった。後者については、中性子回折ひずみ解析国際標準サンプル「VAMAS」を英国ラザフォード・アップルトン研究所から日本へ移送し、実験へ供することができた。また、初のひずみトモグラフィ画像を得ることができ、当初予定されていた第1目標を初年度で達成することができた。以上の理由から、本研究計画は当初予定通りに順調に進展しているものと判断している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度も予定通り行う。次年度実施しなければならない点として、材料工学的意義から、自動車用クランクシャフトの応力ひずみ分布の3次元分布解析がある。これは予定通り実施する。また、今年度課題となった、径方向ひずみ解析における大きな誤差、汎用性の拡張などもシミュレーションスタディを中心に随時改善を進める。また、国際会議における発表や論文の執筆など、アウトプットも精力的に行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度未使用額の発生理由:予定通りの金額を執行したが、最後に納品された中性子遮蔽材の納期が年度末の3月中旬となってしまったため、会計システム上、平成24年度の執行として計上されなかったため。 上記未使用額の平成25年度での使用予定:本余剰金は中性子遮蔽材の購入に充てた。これにより中性子ビーム実験のノイズの減弱に成功している。
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