研究課題/領域番号 |
24710100
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
鬼柳 亮嗣 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門J-PARCセンター, 研究員 (50521770)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | プロトン伝導体 / 中性子構造解析 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、固体酸と呼ばれる超プロトン伝導体の3次元的なプロトン伝導メカニズムと超プロトン伝導性発現の機構を理解する事にある.固体酸は内部に水素結合をもち,相転移とともに発現する水素結合の無秩序化がプロトン伝導に大きく関わっていると考えられているため、本物質のプロトン伝導性の起源を理解する上で相転移のメカニズムを理解する事は本質的に重要である.これまで本研究では、固体酸の混晶であるRb(3-x)KxH(SeO4)2を研究対象として電気伝導度測定や結晶構造解析により相転移温度と構造の関係を調べてきた。電気伝導度測定の結果、Rb(3-x)KxH(SeO4)2の相転移温度はxの値が大きくなるに従い低下するが,その変化はxに対して非線形であることがわかった.一方,中性子構造解析の結果、各組成でのSeO4四面体の歪みと相転移温度の間には線形の関係があることが明らかとなり,SeO4四面体の弾性歪みエネルギーと相転移温度が重要な関係にある事が示唆された. 今年度は、昨年度までに得られた中性子構造解析用データの更なる詳細な解析を行った。その結果、x=1,2の混晶系試料においては元の格子周期と異なる位置に新たな反射が出現している事が明らかとなった。反射が現れた位置から、格子は元の格子の立体角方向に2倍の超構造をとっていると考えられ、この超構造はKとRbの占有率に起因していると示唆される。現在、この2倍の超構造を取り入れた「正しい」構造の決定を行っている。また、今年度は中性子準弾性散乱の実験も行った。本測定は、時間的・空間的な局所構造を探る目的で行っており、プロトン伝導相における原子同士の時間発展的相関、特にプロトン同士の振る舞いについて明らかにできると考えている。現在までの解析の結果、超プロトン伝導相において実際に伝導するプロトンに起因するシグナルを捉えることに成功している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究では混晶物質の合成,電気伝導度の測定,中性子単結晶構造解析、中性子準弾性散乱実験を行った.当初の予定では今年度は圧力下や高温での中性子回折実験を行い、圧力下での構造解析や高温でのプロトン伝導に起因する散漫散乱の測定を予定していたが、上述の2倍の超格子を考慮した詳細な構造決定が急務となったため、静的な構造解析を目的とした圧力や高温下での実験は行なわず、動的な構造解析を目的とした準弾性散乱の実験のみを行った。準弾性散乱データの今後の解析により時間・空間的な局所構造を解明できると考えている。実験計画としては当初の予定と異なる部分もあるが、静的な結晶構造に関する新たな知見が得られ、局所構造に関する測定も行っていることから、研究は概ね順調に進んでいると言える。また、これまでに得られた結果は、既に論文や学会等において発表を行っており,内外に向けた積極的な結果の公表という意味においても順調に進んでいると言える.
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今後の研究の推進方策 |
上述のように、予想されていなかった超構造の存在が明らかとなったため、今後その詳細な決定を行う必要がある。その上で当初の予定通り今年度は高圧下の構造解析を行い、圧力下における相転移温度の変化と結晶構造の関係を明らかにする予定である。この結果とこれまで得られている相転移温度と構造の関係から、固体酸の相転移を決定づける構造的要因を特定できると考えている。また、高温下における中性子回折実験により散漫散乱の探索を行い、プロトン伝導相における静的な原子相関を解明する予定である。また、昨年度測定した中性子準弾性散乱データから時空相関関数を求め、時間・空間的な局所構造を明らかにする予定である。上記結果を統合することで、固体酸のプロトン伝導性の全体像を理解できると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまでに行った中性子回折実験の結果、混晶系物質は2倍の超構造をとっていることが初めて明らかとなった。これは当初全く予想していなかった結果であり、本研究により初めて明らかとなった知見である。しかしながら、静的構造の研究を進める上ではこの超構造の詳細な決定が必要であるため、今年度は当初予定していた圧力下や高温下での静的構造の研究を目的とした実験を行う事ができなかった。これに伴い、高圧下での実験を行う際に必要となる単結晶回折実験用高圧セルの製作等も今年度は行わなかったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
上述のように、今年度は高圧下での中性子回折実験を行う予定であるので、この測定を行う際に使用する高圧セルの製作に予算を使用する予定である。また、本研究で得られた成果を論文や学会等で発表するための費用としても予算を使用する予定である。
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