研究課題/領域番号 |
24710103
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
大下 英敏 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 博士研究員 (00625163)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 中性子検出器 / 中性子コンバータ / ホウ素蒸着 / MCP / GEM |
研究概要 |
本研究の目的は中性子検出用3-He(ヘリウム)ガスの代替コンバータとして、Micro-Channel Plate(MCP)の細孔内に窒化ホウ素(10-BN)を被覆した新しい中性子コンバータを開発することである。 本年度の実績としては、粒子輸送コードGeant4シミュレーションを利用した形状デザインの最適化、10-B(ホウ素)成膜作業設備の構築、中性子検出器用テストスタンドの開発が挙げられる。 Geant4シミュレーションの結果、MCPの細孔40μmφ、ピッチ50μm、厚み3mm、10-BNの膜厚を1μmとすることで、入射角10°の熱中性子に対して約60%の中性子感度が期待できることがわかった。 10-BNの薄膜形成は猛毒ガスであるB2H6(ジボラン)などの使用が必須であるため、成膜作業設備の確保は上手くいっていない。その一方で、10-Bの成膜作業設備の構築は新しい中性子コンバータと比較するオーソドックスな中性子コンバータを作成するために進めている。この作業設備は高エネルギー加速器研究機構内にある蒸着装置をボロン蒸着がおこなえるようにしたものである。 中性子検出器用テストスタンド(nGEM)はGas Electron Multiplier(GEM)を用いた二次元中性子検出器であり、中性子コンバータを取り換えることで、中性子コンバータの比較試験が可能となる。nGEMについては、これまでにJ-PARC MLFにおいて中性子照射試験がおこなわれ、検出器システムとして良好な結果が得られている。nGEMの開発については学会発表をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、MCPの細孔内に10-BNを被覆して新しい中性子コンバータを開発する予定であったが、蒸着作業の過程で使用する猛毒ガスの取り扱い等の問題により作業を進めることができなかった。 高エネルギー加速器研究機構内に整備中の10-B蒸着装置は電子ビーム蒸着装置であり、MCPの細孔内に成膜することは困難であるが、比較用の簡単な形状を持つ中性子コンバータ作成には適している。現在、蒸着装置の調整をおこなっており、夏前から10-B蒸着作業が開始できる見込みである。 その一方で、Geant4シミュレーションによる形状の最適化および中性子コンバータを収納し、中性子照射試験をおこなうnGEMの準備はほぼ完了している。
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今後の研究の推進方策 |
MCPの細孔内に10-BNを被覆する化学蒸着法の適用は難しいので、中性子コンバータの開発としては、MCPを製作する浜松ホトニクス(株)から10-Bが被覆されたMCPを購入することを検討している。10-Bが被覆されたMCPは中性子用イメージインテンシファイアとして開発された実績を持ち、この場合、MCPは真空中に置かれるが、本研究においてはガス雰囲気中に置かれることになる。両者の違いにより動作安定性に問題が発生することが予想されるので、実際に中性子照射試験をおこない動作特性の理解や動作条件の決定等をおこなう予定である。 10-B被覆MCPの有用性を評価するためにアルミ板上に10-Bを蒸着した簡単な形状を持つ中性子コンバータ(Bカソード)との比較試験をおこなう。Bカソードの製作は高エネルギー加速器研究機構内で現在整備中の蒸着装置を活用するとともに、10-B蒸着技術のノウハウを得ることを目標とする。夏ごろまでに2種類の中性子コンバータを用意し、秋以降に中性子照射実験をおこなう。
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次年度の研究費の使用計画 |
10-BNの成膜作業に関連して予定していた出張をおこなわなかったので次年度使用額が発生した。次年度に繰り越した研究費と翌年度分として請求した助成金を活用し、10-Bが被覆されたMCPを購入する他、Bカソードの作成もおこなう。 中性子検出器システムの構築や中性子照射試験については、所属機関の設備や申請者等が管理しているJ-PARC MLFビームラインを活用するため多額の研究費の使用計画はない。 その他に研究成果を発表するための国内出張と海外出張を計画している。
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