本研究の目的は中性子検出用3-He(ヘリウム)ガスの代替コンバータとして、Micro-Channel Plate(MCP)の細孔内に窒化ホウ素(10-BN)を被覆した新しい中性子コンバータを開発することである。 平成24年度の研究において、MCPの細孔内に10-BNを被覆する化学蒸着法の適用が難しいことがわかったので、10-B(ホウ素)含有MCPを浜松ホトニクス(株)から購入し、本研究の着想の有用性を確認することとした。 10-B含有MCPは中性子用イメージインテンシファイアとして開発されたもので、通常、真空環境下で動作するが、本研究では、ガス雰囲気下で動作させる。MCPを放射線ガス検出器として動作させた例はX線検出器応用では前例があるが、中性子検出器応用では殆どない。X線検出器での動作条件を参考に、ラボテストをおこなった結果、中性子線源に対する応答を確認することができた。 また、アルミ板上に10-Bを蒸着した簡単な形状を持つ中性子コンバータを自作するため、高エネルギー加速器研究機構内に電子ビーム蒸着装置を整備した。こちらの設備を使用し、10ナノメートル程の成膜が可能となった。 中性子検出器用テストスタンドであるnGEMはGas Electron Multiplierを用いた二次元中性子検出器であり、中性子コンバータを取り換えることで、中性子コンバータの評価試験がおこなえる。nGEMについては、これまでにJ-PARC MLFおよび北海道大学において中性子照射試験がおこなわれ、検出器システムとして良好な結果が得られている。これらの開発状況については、3件の国内学会において発表されている。
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