研究課題
今年度は、有限要素法による安全性評価計算を行った大口径ヘリウム3ガスセルを製作した。製作したセルはφ100×L100mm、ガス量14.9atm・cm、安全係数は2程度である。偏極性能を高めるため光ポンピングに使用するアルカリ金属はカリウム(K)とルビジウム(Rb)の混合物とし、それぞれ別のアンプルから気相で導入した。しかし、この方法ではKとRbの比率の制御が困難であることが分かり、事前にKとRbを10:1で混合したアンプルでセルを製作する手法を開発、セルを追加製作した。追加製作したセルはφ69×L121mm、ガス量13.0atm・cm、安全係数は2程度である。今回の開発により、K/Rb混合型大口径ヘリウム3ガスセルの安定生産に目処をつけた。さらに、大口径ヘリウム3ガスセルを偏極デバイスとして実用化することを目指し、偏極中性子回折実験のスピンアナライザとして使用するための装置の設計・製作を行った。この装置は今後中性子小角散乱装置で用いる計画である。従来の偏極ヘリウム3ガスセルでは光ポンピングに気相のKとRbを用いるが、密度が低く性能を制限する要因となっていた。これを克服するためZeolite中にKとRbを分散させ飛躍的に密度を高めた新方式のヘリウム3ガスセルを製作した。円偏光レーザーを照射しヘリウム3ガスの核スピン偏極を試みたが、有意な偏極は観測されなかった。また、中性子ビームが不要なヘリウム3ガス核スピン偏極率測定手段として、電子常磁性共鳴法(EPR)による測定回路を製作した。従来のEPR測定装置はロックインアンプ、ファンクションジェネレータなどを組み合わせた大掛かりな装置であったが、12×12×3cmの箱に主要回路を収める設計に成功した。実際に回路を組み立て、RF信号送信回路および測定回路の動作確認試験まで行ったが、偏極率測定は技術的問題から実施できなかった。今後、試験を実施した後に偏極率測定に使用する計画である。
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JPS Conference Proceedings
巻: 8 ページ: 036008
http://dx.doi.org/10.7566/JPSCP.8.036008