研究課題
平成25年度は、前年度で解析したアゾべンゼン/ニオブ酸層状複合体の微細構造情報を基にして、光反応前後の微細構造変化の解析を行った。特に層状構造に関する変化と層状空間内での微細構造変化に分けて研究を進め、光形態変化メカニズム解明につながる重要な研究成果を得た。光反応時の層状構造の変化に関しては、X線回折装置内にアゾベンゼンのトランス-シス光異性化反応用の光源と反応部分の分光測定を行うための装置を構築し、X線による層状構造情報とアゾベンゼンの光反応を合わせて測定した。その結果、紫外光によりトランス体からシス体へ異性化する時には反応の進行と共に層間が二値的に変化して収縮するのに対し、可視光によりシス体からトランス体へ逆反応させた時には連続的に変化して層間が拡大した。つまり、収縮する時は反応がある程度蓄積してから構造変化が誘起され、拡大する時は反応と共に徐々に構造変化し、形態変化が誘起されることが明らかになった。一方、層状空間内の微細構造変化に関して赤外吸収分光測定を行ったところ、ナノシートと吸着するアゾベンゼンのフッ素鎖側の構造については光反応前後で変化が無いのに対して、層状空間中央部にあたるアルキル鎖部分では反応と共に構造変化が見られた。つまり、ナノシートに分子が強固に吸着することにより、層状空間中央部で反応と共に誘起される大きな構造変化が効率良くナノシート間で伝達して形態変化を誘起しているということが明らかになった。また研究期間全体を通して、光形態変化を示す層状複合体の微細構造が解析でき、特異な吸着構造などの形態変化に重要な構造的因子の一部を解明できた。層状空間を利用することより、分子集合構造を制御して機能発現できるということが明らかになり、新たなアプローチによる光機能材料開発が可能になると期待できる。
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