今年度は、トポロジカル超伝導体と有機分子の分子接合による有機分子のフォノン制御を目指し、研究を行った。まず、トポロジカル超伝導体と量子ドットを埋め込んだアハラノフ・ボームリングを接合した系における伝導特性を理論的に調べた。トポロジカル超伝導体には、通常調べられている端にマヨラナが1つ存在するクラスDのトポロジカル超伝導体だけでなく、端に2つマヨラナが存在するクラスBDIやDIIIといったトポロジカル超伝導体も存在する。そのようなトポロジカル超伝導体では、コンダクタンスがゼロバイアスでゼロになるなど、クラスDと異なる特異な伝導特性が現れることを明らかにした。これらの成果をPhysical Review B Rapid communicationに掲載した。さらに、半導体物理国際会議(ICPS)において、口頭発表を行った。現在、これらのトポロジカル超伝導体を有機分子に接合した系での非古典的なフォノンモードについて調べている。この成果によって、マヨラナフェルミオンとフォノンを用いた量子精密測定が可能であると期待している。 また、交流場による有機分子中のフォノンの制御について研究を行った。直流電圧と微弱な交流電圧を用いることによって、フォノン数を制御することができることを明らかにした。フォノン数は、交流の振動数を変化させることによって、増加させることだけでなく減少させることもできる。これを利用した交流場によるフォノン冷却を提案した。この結果を現在論文に執筆中である。
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