研究課題/領域番号 |
24710115
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
村松 寛之 長岡技術科学大学, 工学部, 助教 (70509984)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | カーボンナノチューブ / ドーピング / 透過型電子顕微鏡 |
研究概要 |
当該年度はドーピング処理により、同軸構造に与える構造変化の影響の検討を行った。2層カーボンナノチューブ(DWNTs)へ窒素ドーピング、またホウ素ドーピング処理を施したサンプルの合成を試み、その構造解析を行った。 窒素ドーピング処理には窒素プラズマ処理をDWNTsに施した。Raman分光分析結果において窒素ドーピング処理後にDWNTsの構造欠陥に起因するD-bandの増大が確認された。一方、内層チューブに起因するRBMの大きな変化は見られなかった。つまり、DWNTsの内層は外層に守られていることから、選択的に外層のみに窒素ドープされた可能性がある。また透過型電子顕微鏡観察においては窒素ドープ後においても明らかな構造変化が見られなかった。XPS分析結果においては窒素置換に起因するスペクトルが確認された。また内層チューブに起因する蛍光特性を調査した結果、窒素ドープ後においても明らかな変化は見られなかった。これらの結果は窒素が外層チューブのみにドープされた可能性を示唆し、同軸ハイブリッド構造合成された可能性を見いだせた。 DWNTsへのホウ素ドーピング処理を高温熱処理法によりサンプル調整し、その構造解析を行った。光吸収および蛍光分析の結果、内外層の電子状態は1500度のドーピング処理により大幅に変化することが分かった。特に1400度以下のドープにおいては内層チューブへの物性の影響が見られないことからハイブリッド構造形成の可能性を見いだせた。 今後、3層カーボンナノチューブ(TWNTs)へもドーピング処理への展開を図るために、ラマン分光分析によりDWNTsと比較検討を行った。TWNTsはDWNTsと同様にカイラリティの組み合わせによりスペクトルが変化し、TWNTsの再内層はDWNTsに保護されている安定な状態であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は革新的な機能を有してヘテロ2層カーボンナノチューブの合成を異元素ドーピングにより合成を目指すものである。 本年度はDWNTsの外層または内外層への異元素ドーピング法の確立を目指した。そこでは当初の予定通り、後処理法(プラズマ処理法、および高温熱処理法)によりプラズマ処理法による窒素ドープ、また高温熱処理法によるホウ素ドープ(過去において研究知見を有している)のサンプル調整に成功した。また合成したサンプルに対し、透過型電子顕微鏡、ラマン分光分析、光吸収測定、蛍光分析、などを通じ体系的な解析を行うことができた。また合成したサンプルの詳細な物性を検討した結果、外層チューブのみに窒素、またはホウ素が置換された同軸DWNTs合成の可能性を見出すことができた。 また3層カーボンナノチューブにおいても同様にホウ素ドーピングによるヘテロ構造の可能性も同時に検討した。そこにおいて特に1400度程度のドーピング処理において、置換と同時に、3層ナノチューブの融合が発生する発見があった。また窒素ドープにおける構造変化の追跡も今後、検討予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の方針として、2層カーボンナノチューブのさらなるドーピング量の制御法を目指し、処理時間の調整、ドーピング前の2層カーボンナノチューブに欠陥を導入などによる変化の検討を行う。また本年度は前年度と同様にプラズマ処理による効率的でかつ高濃度ドーピングの制御、合成時におけるドーパントを混入させる方法、ドーパントをDWNTsに内包させ高温熱処理による方法、などを行いヘテロ化DWNTsの合成を目指す。プラズマ処理には水素、窒素、酸素、アルゴンといった各種プラズマ処理を施す。それにより水素、や窒素などのドーピングが見込める。またプラズマ処理時間やエネルギーを調整することで構造欠陥を導入させる。そこに窒素プラズマ処理などを施すことで高濃度ドープを目指す。またDWNTs合成時に窒素化合物、または他のドーパントを混入させることによるドーピングも試みる予定である。更にDWNTsの内部空間を利用し、そこにホウ素や窒素化合物を内包させ、当該物質を高温熱処理によりドーピング反応が起こるか実験を行う。 以上の実験計画により合成したサンプルの詳細な構造を透過型電子顕微鏡やラマン分光分析、蛍光分析法により解析を行う。それによりドーピングによるDWNTsの構造に与える影響や物性の変化などの解析を行う。また単層CNTまたは三層CNTにおいても同様にドーピング処理をおこない、DWNTsの場合との比較検討を行いつつ、実験を進める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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