研究課題
本年度は24年度に引きつづき、2層カーボンナノチューブ(DWNTs)へのドーピング処理実験、およびその構造解析実験を行った。窒素ドーピング実験においてはプラズマ処理時にバイアス電圧を印加することで、ナノチューブへのドーピングの影響を検討した。Ramanにおける結果ではバイアス印加によるD-bandが明らかな変化がなかった。またホウ素ドーピングにおいてはホウ素ドープ処理後において低温領域で、電気伝導性がドープ前と比較して良好である可能性を見出した。これはドーピングにおいてキャリア濃度が上昇した可能性、またチューブ間での融合現象におけるネットワーク化が考えられる。今後、さらなるホウ素ドーピングの実験条件最適化、またバルク体の電気伝導など特性の検討を行う。3層カーボンナノチューブにおいても、ホウ素ドーピング処理をDWNTsと同様に行い、詳細な構造解析を行った。結果、3層カーボンナノチューブにおいてもチューブ間で融合現象が発現することが分かった。詳細な透過型電子顕微鏡観察により、3層構造の再外層と2層目が融合した同軸構造(DWNTsに2本の単層ナノチューブが内包)となることが分かった。この融合による3層構造の融合現象を通じた構造変化は、シミュレーション結果と良く一致することが分かった。またホウ素ドープを施した3層カーボンナノチューブは電気伝導特性が向上することが分かった。これは、チューブ間においてホウ素が融合促進剤して働き、融合を促進するためと考えられる。またこのネットワーク化により、電気伝導特性の向上に寄与していることが分かった。
2: おおむね順調に進展している
本研究は今まで明らかになってこなかった2層カーボンナノチューブをドーピング処理によりヘテロ化し、その構造、物性解明を目的としている。本年度においても昨年度と同様にドーピング処理を施し、詳細な構造や物性解析を実験を通じて推進することができた。またドーピング実験においてはプラズマによる窒素ドープ、高温加熱によるホウ素ドープ、本年度は合成時にアンモニアボラン錯体を導入し、DWNTsの合成を試みた。アンモニアボラン錯体を利用したサンプルにおいてはDWNTsの合成には成功することができた。今後、実際にB、N、またはBNがチューブの結晶格子内に取り込まれているか確認する予定である。また2層カーボンナノチューブと並行して、3層カーボンナノチューブのドーピング処理を行い、世界で初めて3層カーボンナノチューブ間での融合現象が発現することを見出素ことができた。この知見は、多層カーボンナノチューブ間においても融合現象が起こる可能性があることを示唆するものであり、重要な知見であると考えれられる。さらに実際にマット状態の3層カーボンナノチューブがホウ素ドーピング処理により電気伝導性が向上することを確認することができた。
今後の方針として、窒素、ホウ素ドーピング処理したサンプルの更なる最適化処理の検討、合成段階におけるホウ素源、窒素源、窒化ホウ素源を導入し、DWNTsの合成を試みる予定である。また今までの研究知見で、窒素、またはホウ素がプラズマ処理、または高温熱処理でドーピング可能であることが分かっている。これにより、ドーピングサンプルを合成しつつ、さらに電気デバイスとしての特性を検討する予定である。特に、ドーピングサンプルの電気2重層キャパシタ、リチウムイオン2次電池負極としての特性評価を行う予定である。また3層カーボンナノチューブにおいてもDWNTsと並行してドーピング処理による、構造変化解析またはエネルギーデバイスとしての検討を行う予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
RSC Advances
巻: 3 ページ: 26266-26270
10.1039/C3RA45394D
炭素
巻: 2013 ページ: 279-283
10.7209/tanso.2013.279