本年度は前年度の研究成果をもとに2層カーボンナノチューブへの異元素ドーピングの実験、ドーピングサンプルの構造物性解析、また前年度に引きつづき3層カーボンナノチューブの基礎物性解析を行った。2層カーボンナノチューブへのBNドープ検討実験においては合成中にアンモニアボラン錯体を導入し2層カーボンナノチューブを合成したが、ラマン分光分析結果においてG-bandおよびRBMの明らかなシフトは確認されなかった。これは格子中に取り込まれない、または極微量のみがドーピングされたためであると考えられる。2層カーボンナノチューブへのホウ素ドーピング実験においては1400度から1500度程度においては同軸構造を保持したままドーピング可能であるということが分かった。同サンプルのXPSにより元素分析を行った結果、1atm.%以下と極微量であるがドーピングされていることが分かった。Ramanおよび蛍光分析結果より外層へのドーピングが支配的であると予想された。また室温から10K程度の電気抵抗率測定においては低温においてドープサンプルが未ドープサンプルと比較して電気伝導特性に優れていることが分かった。これはホウ素ドーピングによるキャリアの増大によると考えられる。
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