研究概要 |
フェムトリットルまたはそれ以下の極微量反応溶液操作技術は、ナノスケールの生化学反応容器[Chiu et al., Science, 1999]や新材料合成法[Zheng et al., Adv. Mat., 2004]への応用が期待される。これまでに、EWODやマイクロ流路内での油中水滴生成・操作技術が広く研究されてきたが[Huebner et al., Lab Chip, 2008]、水溶液の界面張力が大きい (1~100 mN/m程度)という制限から、通常は直径で数百~数十um(体積でnL~pL)の液滴が制御可能な範囲であった。一方、脂質二重膜から成るリポソームも液滴と同様に溶液を内封できるカプセルであり、その大きさは10nm~100umまで幅広く調整可能である。脂質膜の曲げ弾性係数は10kBT程度であり、熱揺らぎを少し超える程度の効果で多様な変形を示すことが知られている。 従って、リポソームを反応容器として溶液の添加や分割を行うことができれば、世界最小のフェムトリットル溶液操作系実現への可能性が広がる。これまでに、融合剤や電気刺激を用いてリポソームを融合し、内封液を混合させることで反応をトリガーする試みがなされてきた。しかし、融合後のリポソームを分割することは困難であったため、その応用は一度の試薬混合に限られていた。多種の溶液の逐次的混合や、溶液の分割といった操作は実現されていない。 本研究では、リポソームの融合と分裂が起こる物理条件を詳細に調べ、フェムトリットル体積の溶液添加→混合→分割といった連続操作、およびその繰返しが可能な基盤技術を確立する。
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