研究課題/領域番号 |
24710117
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
吉田 秀人 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (00452425)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | カーボンナノチューブ / 電子顕微鏡 / 環境制御型透過電子顕微鏡 / ナノ粒子 / グラフェン |
研究概要 |
テストチャンバーを作製し、環境制御型透過電子顕微鏡(ETEM)内で実現可能な温度、圧力の範囲で、ETEM観察に適したカーボンナノチューブ生成条件を探索した。その結果をふまえて、実際にETEM内でカーボンナノチューブを成長させ、その様子を直接観察した。具体的な成長条件は次の通りである。TEM観察用に切り出し薄片化したシリコン基板を大気中で1000℃で2時間加熱し、表面に酸化膜を形成させる。その上に触媒としてコバルトを約1nm蒸着する。この基板を試料加熱ホルダーにセットしETEM内に挿入し、真空中で550 ℃に加熱後、アセチレンを数Pa導入してカーボンナノチューブを成長させた。 高分解能ETEM観察から、カーボンナノチューブ成長中の触媒ナノ粒子が、純コバルトと炭化コバルト(Co3C)の複合構造をとっていることを明らかにした。カーボンナノチューブの成長端は炭化コバルトと接しており、純コバルトはカーボンナノチューブと接さない粒子内部に残っている。我々はこれまでに,鉄や鉄とモリブデンとの混合物を触媒とするカーボンナノチューブの成長をその場観察することにより、全体がFe3Cや(Fe,Mo)23C6という炭化物になっているナノ粒子からカーボンナノチューブが成長することを明らかにしてきた。鉄の場合と違い、コバルトの場合に全体が炭化物にならない理由は、コバルトが鉄よりも炭素を固溶しにくく、炭化物が不安定であることによると考えられる。ただ、カーボンナノチューブの成長端はコバルトの場合も炭化物になっており、炭化物がカーボンナノチューブ成長に重要な役割を果たしていることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りテストチャンバーを作製し、ETEM内で実現可能な温度、圧力の範囲で、ETEM観察に適したカーボンナノチューブ生成条件を探索した。ETEMその場観察により、カーボンナノチューブ成長中のコバルト触媒の構造を明らかにすることができた。また、カーボンナノチューブ成長中の触媒ナノ粒子の構造をETEM像から決定する際に、シミュレーション像とETEM像を比較する方法を学術論文として発表した(H. Yoshida et al., Micron 43 (2012) 1176-1180.)。
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今後の研究の推進方策 |
収差補正ETEMによるカーボンナノチューブ成長その場観察を推進し、ナノ粒子とカーボンナノチューブとの界面構造を明らかにする。特に成長初期過程の観察に注力することで、グラフェンの形成過程に関する知見を得ることを目指す。得られた研究成果を学会での発表や学術雑誌における論文発表、ホームページへの掲載を通して、広く社会・国民に発信する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は異なったが、研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。
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