研究課題/領域番号 |
24710122
|
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
瓜田 幸幾 長崎大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40567666)
|
キーワード | キャパシタ / リチウムイオン二次電池 / ナノカーボン / 電子顕微鏡 / 局所構造解析 |
研究概要 |
本研究では,蓄電デバイスの充放電過程におけるホスト材料の構造変化,電極反応に寄与するホスト材料の細孔構造と充放電特性の関係を電子顕微鏡内で視覚的に捉えることで,理想的な電極構造を提唱することを目的としている。そこで,顕微鏡内での観察に適した試料作製,電子顕微鏡内で得られた結果を考察する際に必要となる電子顕微鏡外における電極構造の評価及び細孔内のゲストイオン状態の解明を行った。 昨年度,フェノール・ホルムアルデヒドをカーボン源,層状粘度鉱物を鋳型としてグラファイト作製の可能性を見出していた。しかしながら,既手法ではグラフェンの積層数の制御,層間への挿入が不十分であることから層間内でのイオン交換に着目しカーボン源の見直しを行った。変更したカーボン源により,グラファイトの作製が可能であることが分かったため,これについては引き続き条件の検討を行っていく。 既往研究にて電気二重層キャパシタの容量が十分に発現しないと考えられてきたマイクロ細孔(細孔サイズ < 2 nm)が,ゲストイオンの脱溶媒和により高い電気二重層容量を示すことが知られていたが,全てのマイクロ細孔で発現していなかったため,細孔構造と内部のゲストイオンの状態を明らかにする事が重要課題であった。種々の細孔構造を有した炭素電極,Liイオンをゲストイオンとして用い,電解液を含浸させた炭素電極細孔内の溶媒和状態の評価を行ったところ脱溶媒和には溶媒和イオンに対する細孔サイズだけではなく,細孔形状(平面状,スポンジ状)が大きく寄与していることが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度はSTEM-分析機器搭載のHR-STEM及びin-situ電気化学測定用試料ホルダの納入に伴い,電子顕微鏡室の改修工事が行われたため,当初の計画にあった電子顕微鏡による十分な評価は出来ていない。また,合金系炭素電極について,Sn系は数nmのナノ粒子を担持することが確立出来ているが,Si系は再現性の良い十分な結果が得られていないため,作製方法の見直しが必要である。しかしながら,薄層グラファイトの作製条件の検討,Li-NMR測定及びRaman分光測定による細孔サイズと細孔内溶媒和状態の関係については有意な知見を得ることができた。フローキャパシタセルによる電気化学測定においても改善点などを見出すことができ,次年度のHR-STEM測定へ応用できると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
薄層グラファイト作製における層数制御の条件の検討を行う。 新規HR-STEM及びin-situ電気化学測定用試料ホルダの測定環境条件の検討を行い,多孔性炭素電極及び合金系炭素電極を用いて,充放電過程にある電極構造のin-situ観察を行う。 本年度,ex-situ測定において結果が得られた細孔内Liイオン状態についてin-situ測定の検討を行う。
|