研究課題/領域番号 |
24710127
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
片岡 知歩(浜井知歩) 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (70443009)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 無細胞合成 / 基板支持脂質膜 / 膜タンパク質 |
研究概要 |
平成24年度は、膜タンパク質を固定化する脂質膜を作製し、その性質を明らかにすることを計画していたのでこれに取り組んだ。基板支持脂質膜については、無細胞タンパク質合成溶液とともに37℃で加熱できることを確認した。固定化ベシクル系については、ビオチン-ストレプトアビジン系を用いてベシクルを架橋し、この架橋化ベシクルをガラス表面に結合させる方法を検討した。 平成25年度から膜タンパク質の使用を予定していたが、この計画を前倒しし、バクテリオロドプシンについて検討を行った。その結果、この系は本研究目的を達成するためにはあまり適切ではないことが分かった。そこで、モデル膜タンパク質をouter membrane protein Aの膜貫通ドメイン(OmpA176) に変更した。 次に、基板支持脂質膜上でOmpA176の無細胞合成を行った。無細胞合成反応の時間を2時間から一晩、脂質の種類をDOPC、DMPCと変えて実験を行ったが、いずれの条件においてもOmpA176が多数膜に吸着するものの、正しくフォールディングしないことが分かった。そこで基本に立ち返り、バルク溶液中でベシクルとともにOmpA176の無細胞合成を行った。界面活性剤なし、Triton X-100の添加、およびオクチルグルコシドの添加、の3条件で合成を行い、Tritonの存在下でフォールディングが起こることを確認した。そこで、基板支持脂質膜および固定化ベシクル上に、Tritonを添加した合成溶液を滴下してOmpA176の合成を試みたが、脂質膜が比較的安定に存在できる低濃度のTritonでは、膜タンパク質はフォールディングを引き起こさないことが分かった。 そこで詳細な検討のため、OmpA176を精製した。界面活性剤が存在しないベシクル溶液中では、今のところ精製したタンパク質のフォールディングは確認されていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H25年度以降に予定していた膜タンパク質の実験を前倒しし、モデル膜タンパク質の選択について検討を行った。その結果、本研究目的に適したモデル膜タンパク質を選択することができた。また、フォールディングのためには界面活性剤が必要であり、界面活性剤存在下での基板支持脂質膜および固定化ベシクルの安定性について検討することができた。
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今後の研究の推進方策 |
バルク溶液中での精製OmpA176:Hのフォールディン条件を調べる。これまでの経緯から界面活性剤が必要と思われるので、界面活性剤の種類と濃度を変えて検討を行う。次に、基板固定化脂質膜へのOmpA176:Hのフォールディングについて、その方法の検討を行う。 また当該年度の実験において、基板表面に固定化された脂質膜と界面活性剤との相互作用について不明な点が多いために、界面活性剤存在下でのフォールディング条件の検討が難しかった。そこで、脂質-界面活性剤-固体表面間相互作用の基礎的性質について研究を行う。具体的には、界面活性剤を含むベシクルを用いたベシクルフュージョン等について研究を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の物品費に充当するため、当該年度の予算を節約し、次年度に繰り越した。次年度は、実験に必要な物品を購入するために物品費が必要であり、また、国内の学会に出席するための旅費が必要である。また、塩基配列解析などに要する予算をその他に計上した。
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