金属ナノ構造と光との相互作用による新たな光学現象を明らかにするためには,金属ナノ構造の形状を自在に制御することが重要である。特に可視から近赤外領域の光により金属ナノ構造の局在型の表面プラズモン共鳴を誘起するために、ナノメートルサイズで構造の形状、さらに配列やサイズを制御することも必要となる。これまでに金属ナノ構造を精緻に作製することが可能な電子線リソグラフィ技術を用いて、単純なロッドや円だけではなく従来では作製が困難であった屈曲させた金ナノロッド構造を作製し、金ナノロッド構造とは異なる光学特性を示すことを明らかにした。そこで本年度では、2次元上で屈曲させた金ナノロッドの配置を変えた金ナノ構造を作製し,構造の形状や構造間距離による光学特性を計測して評価した。 金ナノ構造同士を数ナノメートル離して配置したナノギャップ金構造を、複雑な構造を有する構造でも大面積に作製する手法を確立した。その結果、湾曲金ナノロッドのナノギャップ金構造だけでなく、形状の異なる2種類の構造を近接させたナノギャップ金構造の作製にも成功した。作製した金ナノ構造は分光計測を行い、構造間距離依存性や偏光依存性などの光学特性の評価を行った。計測した透過スペクトルから、湾曲金ナノロッドのナノギャップ金構造は構造配置位置によりプラズモン共鳴ピークが変化した。また、異種形状のナノギャップ金構造では単体の金ナノ構造とは異なるプラズモン共鳴のスペクトルを示し、ナノギャップのサイズに依存してピーク波長が変化することを明らかにした。
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