研究課題/領域番号 |
24710132
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
加藤 晴久 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測標準研究部門, 主任研究員 (10462839)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ナノカーボン / 動的光散乱 / ゼータ電位 / PFG-NMR / DLVO理論 |
研究概要 |
H24FYでは、ナノ炭素材料の中でも、とくにカーボンナノチューブにおける液中分散方法を検討した。分散剤としては高分子分散剤ならびに低分子分散剤を用いて分散検討を実施した。高分子分散剤としては牛血清由来タンパク質(BSA)、細胞有害性評価によく使用される肺サーファクタント、CMCを用いた。低分子分散剤としてはTween80、Triton、Puluonicを用いて分散を実施した。各分散剤での分散では超音波分散時間、超音波パワーならびに分散温度等の条件を変化させ、分散の最適条件を検討した。 作製した分散液の安定性については動的光散乱を用い、その粒径変化ならびに光散乱強度変化から評価を実施した。カーボンナノチューブの分散剤による表面電位の違いについてはゼータ電位を用いた検討を実施した。結果、安定的に分散された分散液のゼータ電位値は、分散剤にかかわらずその絶対値は小さく、安定性は粒子間の静電反発相互作用ではなく、立体反発相互作用等がかかわっていることがDLVO理論より解明された。さらにPFG-NMRによる自由ならびに束縛分散剤挙動についての検討を実施し、各分散剤の分散液中の挙動の違いについて検討を実施した。 これらの成果を”Preparation and characterization of carbon nanomaterials dispersion using biocompatible surfactant”のタイトルで、イタリアで開催されたThird International Conference on Multifunctional, Hybrid and Nanomaterials において成果発表を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題におけるナノ炭素材料の液中分散方法に関して、計7種類の分散剤を用いた検討を実施し、各分散剤においてそれぞれ条件の最適化実施することができた。本研究課題において”分散”は研究の肝であり、これを達成できたことは非常に重要な成果であり、目標達成に重要な意味をもつ。 また、動的光散乱、ゼータ電位計測やPFG-NMRを用いた、分散されたナノ炭素材料の特製評価方法における要素技術を抑えることができた。これらをもとに、次年度における様々なナノカーボン材料の液中分散安定化メカニズムの解明を実施するための評価基盤を確立することができたことは非常に意義がある。 さらに成果として、これらの結果を国際学会にて発表し、研究成果の発信も適切に実施している。
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今後の研究の推進方策 |
H24FYにて検討した各種分散剤を用いた異なるナノカーボン材料(とくにカーボンブラック、グラフェン)の水中安定分散機構における分散剤の挙動並びに構造について明らかにする。さらにカーボンナノチューブにおける評価結果と比較することで、一次粒子の違いならびに分散剤の違いによる分散安定性の相関について議論し、ナノカーボン分散液の分散安定性に起因する要素抽出を実験的・理論的に実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
主に各種ナノカーボン・分散剤購入費、ならびに、動的光散乱測定用セル等の計測機器の消耗品として計上している。また、研究成果を海外で開催される国際学会で発表するための国内外旅費として計上している。さらに、研究成果を学術雑誌に発表するための投稿料を計上している。いずれの経費も本研究推進に必要不可欠であり、研究計画と整合している。
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