研究概要 |
本研究では、潰瘍性大腸炎の治療を目指して、カーボンナノチューブによる治療薬の経口投与薬物送達を行う。今年度はまず、薬物キャリアとして従来法で開孔したカーボンナノホーン(CNH)を、潰瘍性大腸炎の治療薬としてプレドニゾロン(PSL)を用いた。また、大腸炎モデルとして、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)の自由飲水により大腸炎を惹起させたDSSマウスを用いた。 ①PSL担持CNH(PSL-CNH)の作製…既報に従い、slow combustion法、light assisted oxidation法の2種類の方法でCNHを開孔した。それぞれの開孔CNHにPSLを担持させてPSL-CNHを得た。 ②DSSマウスへのPSL投与量の検討・投与効果評価法の決定…PSL単体をDSSマウスへ経口投与し、効果が現れる投与量について検討すると共に、投与効果評価法についても検討した。PSLの投与量を、1, 5, 25 mg/kg/dayとし、マウスに飲水させるDSS溶液の濃度と投与期間を、既報に多い5%, 7日間に設定した結果、効果がほとんど見られず、死亡例も見られた。原因の1つとして、大腸炎を惹起するDSSの投与量が過量であったことが考えられ、今後、DSSの投与量(濃度、投与期間)も検討項目として必要であることが判明した。また、投与量の検討は、PSL単体とPSL-CNHでは薬物の動態が異なることから、今後はPSL-CNHを用いて行う方が良いと判断した。なお、投与効果の評価法として、体重・大腸長・下痢スコア・血便スコア(炎症軽減効果)、胸腺重量と体重の比(副作用軽減効果)を用いることとした。 ③PSL-CNH投与によるDSSマウスの炎症及び副作用軽減効果の検討…予備的な実験として、DSS溶液の濃度を変えて(3%, 4%, 5%)、PSL-CNHの経口投与実験を行ったが、効果は見られなかった。
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