研究課題/領域番号 |
24710133
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
中村 真紀 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノ材料研究部門, 研究員 (00568925)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ナノ材料 / ナノホーン / 経口投与 / 潰瘍性大腸炎 / 薬物送達 |
研究実績の概要 |
本研究では、潰瘍性大腸炎の治療を目指して、カーボンナノホーン(CNH)による治療薬の経口投与薬物送達を行う。これまでの検討により、薬剤キャリアとして、従来法で開孔したCNHキャリアではなく、新たに構造修飾などを施したCNHキャリアの開発が必要であることが判明している。今年度は昨年度に引き続き、「CNHの構造修飾による新しい薬剤キャリアの開発」を中心に検討を進めた。具体的には、ポリエチレングリコール(PEG)修飾を施したCNHの細胞毒性評価や、キトサン修飾を施したCNHの作製に取り組んだ。 1.PEG修飾を施したCNHの細胞毒性評価…CNHの分散剤として報告されているphospholipid-PEG(PLPEG)を用いて、PEG修飾を施したCNHを作製した。その際、様々な重量比でPLPEGとCNHを混合した。これを、マウスマクロファージ様細胞であるRAW264.7に添加し、細胞毒性を評価した。その結果、PLPEG / CNH = 0.5の際に最も毒性が低く、PLPEGがそれより少なくても、多くても毒性が高まることが明らかとなった。現在、細胞内取り込み量などの解析により、その理由を解明中である。 2.キトサン修飾を施したCNHの作製…キトサンは、カニやエビなどの甲殻類の外骨格に含まれるキチンを原料として得られる多糖類であり、生体適合性を備えた高分子生体材料である。また、大腸の腸内細菌により特異的に分解する。このキトサンをCNHに修飾することで、大腸における薬物送達効率を向上させることができると考えた。キトサン修飾法として、CNHに導入したカルシボキシル基とキトサンに含まれるアミノ基を化学結合させる方法、キトサンの溶解液にCNHを混合し、物理的に吸着させる方法を検討し、後者の方が、効率良くCNHにキトサン修飾を施すことができることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の目標として設定した「CNHの構造修飾による新しい薬剤キャリアの開発」について、着実に研究を進め、学会(第48回 フラーレン・ナノチューブ・グラフェン総合シンポジウム)にてその成果を発表した。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、構造修飾を施したCNHに治療薬を搭載し、細胞を用いた評価を行う。具体的には、今年度に検討したPEG修飾やキトサン修飾を施したCNHに対し、潰瘍性大腸炎治療薬であるプレドニゾロンを担持させる。このプレドニゾロン担持CNHの、細胞内取り込み量や、炎症抑制効果を、マウスマクロファージ様細胞であるRAW264.7やヒト結腸癌由来細胞であるCaco-2を用いて評価する。これにより、プレドニゾロン担持CNHの構造を最適化する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 平成27年度に所属機関から分配される予算が大幅に減額されることが見込まれ、また、下記の用途により平成27年度の支出が増大することが予想されたため、今年度の支出は最低限に抑えた。
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次年度使用額の使用計画 |
細胞実験に必要なアッセイキットが高額であり、それを購入するための物品費として使用する。 また、今年度に引き続き、ルーティン作業の一部を委託するための実験補助者を雇用する予定であり、その雇用費として使用する。
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