[研究の目的・意義]日本人の大半は悪性新生物(がん)で死亡している。このためがんによる死亡者数低減にはがんの超早期発見およびがんの術後検査が重要であることは言うまでもない。がんの超早期診断および術後検査で期待されているのが血中循環腫瘍細胞(CTC )の分離・計測である。がん患者の血中にはCTCの存在が知られおり、CTCの数および遺伝子の解析により腫瘍の部位・大きさ、抗がん剤の適切な選択が可能になると期待されている。つまり、がんの超早期発見、がんの術後経過観察が採血という低侵襲的な操作で実施 可能になる。そこで、本提案では、従来法をはるかに凌ぐCTCの分離・計測法の開発を目指した。 [成果の内容・意義・重要性]がん細胞を従来法と比較し低侵襲かつ簡便に同定・分離可能とした。従来法では、分離・同定に際して細胞を固定化するために、その後 培養に供することは不可能である。しかし、本提案での手法では、非侵襲での同定・分離が可能であり、生きて回収した細胞を培養し、その後の医学研究に供することも可能である。さらに、細胞分離手法を改良することで細胞分離および細胞内分子(DNA)の抽出を可能とする手法の開発に成功した。現状では細胞分離と細胞内分子の抽出には多大な操作を必要とし、抽出時における細胞内分子のロスも問題となっている。一方で今回報告した手法では細胞の回収および細胞内分子の抽出が簡便であり、サンプルロスの抑制も期待できるために本手法はCTCのような希少細胞の分離・細胞内分子の抽出に適した手法であると期待できる。
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