研究概要 |
本課題では、糖鎖をプローブとして利用したバイオセンシングを考案することを目的として、糖鎖固定化技術を開発し、それをデバイスに応用することで、ウイルスの高感度検出法の可能性を探索した。平成25年度は、まず前年度に最適化した糖鎖固定化法を用いて、ヒトインフルエンザウイルスヘマグルチニン(H1 HA)及び鳥インフルエンザウイルスヘマグルチニン(H5 HA)それぞれに対して特異性を有する2種類の糖鎖(Siaα2,6′Lac及びSiaα2,3′Lac)をFETのゲート絶縁膜上に固定化し、糖鎖固定化FETを用いた同タンパク質の検出を試みた。その結果、作製した2種類の糖鎖固定化FETがヘマグルチニン(HA)の亜型を識別し、かつ対象のHAをaMレベルで検出可能であることが確認された(S. Hideshima et al., Anal. Chem., 85, 5641-5644, 2013)。また、鼻粘液中におけるインフルエンザウイルスの検出に向けた基礎検討として、鼻粘液に存在する夾雑タンパク質(リゾチームやアルブミン等)がセンサ応答に及ぼす影響を評価した。続いて、作製した糖鎖固定化FETを用いた、学外の研究機関から入手したH1N1ヒトインフルエンザウイルスの検出を試みた。ターゲットである同ウイルスをFETセンサ表面に添加したところセンサ応答が確認された一方で、対照実験としてH5N1鳥インフルエンザウイルスを添加したところ応答は確認されなかった。以上より、作製した糖鎖固定化FETがインフルエンザウイルスの特異的な検出に有用であることが示唆された。
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