研究課題/領域番号 |
24710137
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研究機関 | 北九州工業高等専門学校 |
研究代表者 |
園田 達彦 北九州工業高等専門学校, 物質化学工学科, 准教授 (30403992)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ペプチドアレイ / 酸化チタン / セルフクリーニング / 質量分析 / MALDI-TOF-MS / リン酸化シグナル / プロテインキナーゼ |
研究概要 |
本研究では、光触媒や太陽電池として利用されている酸化チタンが有するセルフクリーニング機能、および質量分析における無機マトリクスとしての性質に着目し、これを基板として用いることで、基板そのものが非特異的吸着物除去能を有し、かつ高感度な質量分析による検出が可能なペプチドアレイを開発し、プロテインキナーゼ活性の網羅的解析技術確立に向けての有効性を示すことを目的とする。具体的には質量分析において利用されるレーザー光によって切断される化合物の合成と基質ペプチドへの導入、高感度な質量分析が可能な酸化チタン基板作製方法および基質ペプチド固定化方法の確立、そしてリン酸化の定量的な評価が可能か検討していく。 今年度の研究実施計画に基づき、まずは基質ペプチドの酸化チタン薄膜を塗布した基板への固定化方法の検討を行った。今回はシランカップリング剤を用いて酸化チタン表面にアミノ基を導入し、光切断化合物をリンカーとして基質ペプチドを固定化する手法を検討した。これまではポリアクリル酸による基質ペプチドの固定化を行っていたが、合成に手間がかかっていたため改善策として検討した。蛍光標識した基質ペプチドを用いて、固定化処理後の酸化チタン基板をアレイスキャナーにて観察したところ、強い蛍光が観察され基質ペプチドが固定化されていることが確認できた。次に、ペプチドを固定化した状態でタンパク質の非特異的吸着抑制効果について検討した。ここでは蛍光標識したタンパク質を基板に吸着し、水洗浄操作の前後でアレイスキャナーにより吸着量を測定した。その結果、吸着したタンパク質の大部分を水洗浄のみで除去できることが示された。 最後に作成した基板を用いて質量分析を行ったところ目的のペプチドに由来する分子イオンピークが観測できた。今後はもう少し条件を見直し、高感度なペプチドの検出を可能にすることを目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では主に次の3点を検討し、プロテインキナーゼ活性の網羅的解析に向けたペプチドアレイの開発を目指している。①質量分析に適した酸化チタン基板作製方法、および基板への基質ペプチド固定化方法の検討。②固定化基質ペプチドの高感度検出を可能にするマトリクスの検討。③プロテインキナーゼによる基板上固定化ペプチドのリン酸化と質量分析による定量評価。このうち、H24年度は①の達成を目標としており、上述した通りの成果を得られたため、おおむね順調であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に従って推進していく。以下に簡潔に示す。 ①固定化基質ペプチドの高感度検出を可能にする有機マトリクスの検討:固定化基質ペプチドおよびリン酸化済基質ペプチドを高感度に検出できる有機マトリクスの組み合わせを検討する。候補としてはペプチドの質量分析で一般的に用いられているcyanohydroxycinnamic acidや2,5-dihydrobenzoic acidなどを考えている。 ②酸化チタン薄膜上に固定化されたペプチドのリン酸化と質量分析による検出:最適化した作製条件に基づいて基質ペプチド固定化酸化チタン基板を作製し、プロテインキナーゼA(PKA)によるリン酸化反応を行う。その後、最適化した有機マトリクスを用いて質量分析を行い、リン酸化の検出が可能であることを確認する。 ③細胞破砕液中のキナーゼ活性検出:薬剤刺激によりPKA活性を調節した細胞破砕液を用いてキナーゼ活性評価を行う。様々な夾雑物が存在するので、場合によっては質量分析による検出が困難な場合も考えられるが、その場合は酸化チタンが持つセルフクリーニング機能の最適化を行い、質量分析に最適な洗浄条件を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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