研究課題/領域番号 |
24710138
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
三宅 丈雄 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50551529)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 薬剤投与デバイス / 酵素電池 / ハイドロゲル電極 / ウェットデバイス / イオントフォレシス |
研究概要 |
世界的人口増加や新たな基幹産業の創出を見据えた社会的背景から,個人を対象にした携帯型治療デバイスの必要性が高まりつつある.申請者は,安全性や信頼性の観点から,従来型ドライデバイスに代わる革新的なウェットデバイスを創出したいと考えており,今回その具現化の1つとしてイオントフォレシスを誘導させる酵素反応駆動型薬剤投与デバイスを提案し,そのための各要素技術や統合技術などの新たなウェットプロセス技術を確立したいと考えている.本課題に対し,本年度の研究成果は,各素子の基本性能の向上と燃料一体型発電デバイスを試作しデバイスの性能を評価したことである.デバイスの母材として利用するハイドロゲル表面へ導電性高分子を配線し,柔軟な電極基板を作製した.その際,2段階の電解重合法を用いることで,電極の脆さや導電率の改善に成功した.貼るタイプの酵素フィルムを独自開発することにも成功した.その際,ナノスケールナノ素材電極へ酵素とメディエーターの分子修飾することで,世界最高性能の酵素電極を実現させた.さらに,これら部材を一体化させた燃料一体型発電システムを開発することに成功した.具体的には,ハイドロゲル表面に堆積させた導電性高分子配線上に,酵素を包含したナノカーボン電極を貼り付け,ハイドロゲル中に含むバイオ燃料によって発電させた.バイオ燃料は,導電性高分子経由でナノカーボン電極まで拡散し反応が進む仕組みである.これにカソード側での酸素還元反応との組み合わせにより一体型電池が完成した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度に設定した計画「各素子基本性能の向上」「燃料一体型発電デバイスの開発および性能評価」に関して,十分な成果が得られた.また,25年度の計画に設定したイオントフォレシスによる薬剤投与の評価のための微小流路評価デバイスの開発に取り組んだからである.具体的には,デバイスの母材として利用するハイドロゲル表面へ導電性高分子を配線し,柔軟な電極基板を作製した.その際,2段階の電解重合法を用いることで,電極の脆さや導電率の改善に成功した.貼るタイプの酵素フィルムを独自開発することにも成功した.その際,ナノスケールナノ素材電極へ酵素とメディエーターの分子修飾することで,世界最高性能の酵素電極を実現させた.さらに,これら部材を一体化させた燃料一体型発電システムを開発することに成功した.具体的には,ハイドロゲル表面に堆積させた導電性高分子配線上に,酵素を包含したナノカーボン電極を貼り付け,ハイドロゲル中に含むバイオ燃料によって発電させた.バイオ燃料は,導電性高分子経由でナノカーボン電極まで拡散し反応が進む仕組みである.これにカソード側での酸素還元反応との組み合わせにより一体型電池が完成した.微小流路評価デバイスとして,アクリル素材をレーザー加工し,イオントフォレシスに伴い移動する微小水量(数十マイクロリットル)を評価できる微小密閉空間を試作した.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,「電気湿布の開発 (薬剤溶液と燃料一体型発電デバイスのパッケージング)」「電気湿布における皮下組織への薬剤投与の評価」に取り組み,研究成果をまとめたいと考えている.以下に,その詳細を記述する. ・電気湿布の開発 (薬剤溶液と燃料一体型発電デバイスのパッケージング) 申請者が提案する電気湿布は,電気化学を基本とするプロセス開発(大型装置が不要)であり,電源一体型(生体環境に適したバイオ燃料発電)を可能にするため,低価格と小型化が実現される.まず,バイオ燃料を含んだハイドロゲル発電デバイスを皮膚に貼り付けると,皮膚に含まれる電解質によって回路が閉じ,発電が開始される.続いて,発電によって生じた電位差によりドーパント(薬剤)が皮下組織へと浸透する.ここでの電解質は,間質液に多く含まれるナトリウムイオンと塩素イオンであり,これらのイオンの流れが電流となる.ゲルの乾燥や薬剤の流出を防ぐため,プラスチックフィルム等を活用する予定である.また,マイクロ流路を用いた空気バルブを利用することで,溶液の絶縁や隔離をスムーズに行う技術の開発も進める予定である. ・電気湿布における皮下組織への薬剤投与の評価 作製した電気湿布の評価は,in vitroおよびin vivo系にて行う.In vivo系では,「国立大学法人東北大学における動物実験等に関する規定」を遵守して実験をおこない,また同大学医学系研究科・阿部俊明教授などの専門家に相談できる環境が整っている強みがある.今回使用する試薬は,皮膚を経由することでの薬剤効果が既に知られているツロブテロール(気管支喘息治療薬)やインスリン(GFPラベル,糖尿病患者が投与)をモデル試薬としたが,本研究課題の進捗が良ければ,阿部研究室が得意とする眼の網膜疾患などで利用される網膜神経保護因子なども加えていくことで本デバイスを進展させていきたいと考えている.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は,当初計画していた試薬を次年度に延期することによって生じたものであり,延期した試薬に必要な経費として平成25年度請求額と合わせて使用する予定である.本研究では,高価な試薬,酵素,薬剤や細胞(ヒト由来)を多く必要とするため,消耗品の金額の割合が大きな額となることが予想される.また,本研究課題を遂行するために必要なプラスチック材料・電子部品・電極材料の費用も併せて申請する予定である.本研究は,材料科学,表面科学,医工学などの学際研究であるため,関連分野の最新情報の収集が研究推進の大きな原動力となる.また,本研究課題の成果を発展させるためには,技術交流を多くする研究ネットワークの拡充が必要であり,それ相応の旅費を使用する予定である.
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