研究課題
細胞を基本構成材料とした3次元的な「バイオマイクロデバイス」の実現は、in vitroにおける組織・臓器機能の再現や再生医療への応用のために不可欠である。本研究では、バイオマイクロデバイスの構築のために、組織構造の制御方法の確立やそのメカニズム解明を目標とした。制御方法について、肝細胞株(Hep G2)とハイドロゲルビーズとを用いて凝集体を作製することで、分岐した微小流路構造を凝集体内部に構築できることを見出した。このような流路をもつ凝集体は、物質交換能に優れ、肝機能が亢進することも明らかとなった。次に膵α細胞株(α-TC1.6)と膵β細胞株(MIN6m9)を用いて細胞凝集体を作製し、高機能な「疑似膵島」の作製に取り組んだ。凝集体サイズやα細胞とβ細胞の比率を変化させることで、グルコース応答性のインスリン分泌活性が変化することが分かった。また、内部にハイドロゲルビーズを埋め込んで流路構造を付与すると、インスリン分泌活性をさらに高めることができた。メカニズム解明について、膵α細胞株と膵β細胞株によるヘテロ凝集体は、α細胞が外側、β細胞が内側という、マントルーコア構造を自己組織化的に構築した。このような細胞の自己、自他認識を伴った細胞移動現象は、特定のレクチンによって阻害されることが判明した。すなわち、レクチンが認識する糖鎖、あるいは糖鎖が結合した糖タンパク質が、細胞認識と移動メカニズムの一端を担っている可能性が示唆された。本研究を通して、バイオマイクロデバイス作製技術を、高機能な膵島、すなわち「ハイパー膵島」の開発という、社会的に重要なテーマへと展開できた意義は大きい。細胞凝集体において、隣接する細胞の認識と再配列のメカニズムに糖鎖が関与するという分子レベルでの知見を得られたことは、学術的な成果として評価できる。
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