近年、高度情報化社会に向け表示装置への要求が高まっており、特にポータブルディスプレイの普及によりバッテリー寿命を長くするための低消費電力化が強く求められている。現在の表示装置の主流である液晶素子はバックライトの透過率が10 %程しかなく、バックライトで多くの電力を消費してしまう。本研究では透過率が高く、システムの低消費電力化が可能な可変カラーフィルタとして、波長よりも周期の短いサブ波長格子から得られる構造色をNEMS(Nano Electro Mechanical Systems)アクチュエータによって透過波長を制御するデバイスの製作を行った。駆動電圧として3.2 Vを印加した際、775 nmの波長において透過光が17 %減衰し、3.4 Vを印加した際、平行平板静電アクチュエータ同士が接触するpull-in状態で、26 %の減衰が得られたため、アクチュエータの駆動により透過光の制御を行うことに成功した。また、提案した透過型可変フィルタは駆動電圧3.3 Vでの透過光減衰制御が可能なため、昇圧回路が必要なく、標準CMOSで駆動可能である。 シリコンサブ波長格子では、可視領域で透過波長ピークをシフトする光学設計が困難であったため、フィルタ部分に表面プラズモン励起による可視光の異常透過が得られるアルミニウムのサブ波長格子の試作を行った。アクチュエータにより格子周期を広げることを仮定し、基板貫通孔上にアルミのサブ波長格子を格子幅250 nm、格子周期を400 nmから600 nmまで50 nmずつ格子周期の異なる表面プラズモンカラーフィルタを設計した。製作したカラーフィルタの透過スペクトルより、格子周期が450 nmから600 nmまで150 nm広げることで青色から緑色、黄色、赤色を表現しており、黄色のような中間色でも発色可能である。TM波を入射し透過スペクトルを測定した際の透過率は最大56 %であった。したがって、ガラス基板に固定された表面プラズモンカラーフィルタと同程度の透過率の実現に成功した。
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