研究課題/領域番号 |
24710146
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
渕脇 雄介 独立行政法人産業技術総合研究所, 健康工学研究部門, 主任研究員 (80468884)
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キーワード | PCR / 蒸気圧 / 超高速 / プラグ液 |
研究概要 |
当該年度は、前年度に取り組んだ非特異的吸着抑制法と定量用のマイクロチャンバー機構の発明をもとに、超高速PCR法の再現性・安定性の確保と、遺伝子を含む試料液とPCR反応試薬の自動混合機構を新たに発明した。平成24年度までに実施した方法は、平板型連続蛇行状マイクロ流体デバイス内を流れているPCR試料プラグ液前後の蒸気圧差を利用することで、高速な温度制御を達成していたが、これに対し今年度は、固液界面に生じる粘性の力を効果的に活用させる事により、蒸気圧差による超高速PCR法の再現性・安定性の向上に大きく寄与できることを発見した。その結果、1.蒸気圧差と固液界面の粘性の力を駆使した全く新規な核酸増幅法、2.入口からの吐出と出口からの吸引の両方に対応可能、3.多量の試料液も核酸増幅可能、4.サイクル毎分の単位で同じ距離を維持する事で複数の試料プラグ液のPCRが可能なことを見出し、新たに特許出願を行った。 また、ポンプの吐出だけで混合、PCR、秤量、測定を完了させるために、混合機構の自動化としてマイクロチャンバー内に流動してくる液体の界面張力と慣性力を活用する事により、自動的にPCR用の反応試薬と混合する機構の発明も行った。 最後に、平成25年度中に1 ステップで遺伝子検知可能な集積化装置の試作およびそれらの成果発信を行う予定であったが、所属研究機関において平成25年度中に在外研究を実施する事業に採択されたため、当初予定していた研究計画を1年延長する必要が生じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)から検知までをフィールドオンチップに完了するマイクロチップを構築するために、主として超高速PCRによる検知感度、正確性、マイクロ集積化部分の操作性の課題の解決に取り組んできた。これまでに、1.マイクロ空間内の固液界面に生じる粘性の力を最大限に活用した新しい超高速PCR法の発明による再現性・安定性の向上、2.効果的な非特異吸着抑制法により収率の向上、3.遺伝子を含む液とPCR反応液との自動混合機構の実現・発明、4.遺伝子増幅後にプラグ状の試料液を検出用マイクロチャンバーに自動分取する機構の発明などを達成した。一般的に、こうした技術を集積化させて遺伝子を迅速、自動検知するためのフィールドオンチップの研究開発は、複雑な外部制御や煩雑な表面処理などを組み合わせて行われている事例が殆どであり、装置が大型で高価なものが多い。これに対し本研究では、ポンプの吐出だけでこれらの機構が全て終了することができており、概ね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
ポンプの吐出だけで簡便かつ実用的なセンシング(混合、PCR、秤量、測定)機構を構築する事ができたが、多項目の遺伝子を同時・高速にPCR検出する機構の構築・開発に取組む。 多項目開発を実現するため、すでにタブレット端末と小型の機能電子制御ボートを新たに試作し、動作確認するところまで進めており、これにより多項目PCR増幅を可能にするアクチュエーターの開発を行った後、システムに組み込んでオンサイトでの超高速・多項目解析に挑戦していく。 また、本年度が研究最終年度にあたるため、論文化等をとおして研究成果を広く社会に向けて公開するようつとめていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に所属研究機関の長期海外派遣事業(産総研フェローシップ事業)に採択されたため、今年度中に外国の研究機関で在外研究を1年間はじめる事になった。そのため、当初予定していた研究計画を大幅に変更する必要が生じ未使用額が発生した。 前年度の研究計画変更により購入できなかった消耗品の購入と、対外的に広く研究成果を発信するために必要な役務・作業費や印刷製本費として使用する。
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